【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論 64】「書店ゼロ自治体」をなくそう 松波健四郎

  • 2018年3月15日

 電車内で新聞を読む人がいなくなったばかりか、本を読む人も多くはいない。ここまで活字離れしたのかと悲しむ。ほとんどの乗客は、スマホに夢中。私は活字中毒患者だから、いつも単行本を手にしている。

 時間があれば、本屋さんに行く。興味の湧きそうな本を、宝さがしの心境で棚に眼を配る。近年の本屋さんは大型店舗ゆえ、あらゆるジャンルの書物がそろっている。本好きの私などは、1時間ぐらいの余裕が必要で、じっくり本を探す。至宝のひとときである。心ときめく本と出会った時の喜びは、表現できぬくらいうれしくなる。書店は、知識や教養を養う文化拠点、図書館と同様、私たちにエネルギーを注入してくれる大切な場である。

 ところが、書店ゼロの自治体が全国で2割を超えるという。店舗が大型化し、コンビニが雑誌等を扱うため、小さな本屋さんでは経営が成り立たないのだ。人口減少も大きい上、アマゾンのごとく手軽に書物を買うことができるようになった。そこへ活字離れ、新聞までもが部数を減少させる時代なのだ。

 神奈川県大和市は、図書館の存在感をアピールする自治体で、「図書館日本一の町」をうたうのだが、書店と図書館は違う。本屋さんは、毎月1千万円の売り上げがないと経営できないと聞く。小さな自治体では、経営は困難であることが容易に想像できる。商店街には、必ず書店があったのに、今日では大型店舗の入るビルの中に都市部では見られても、地方では見られなくなってしまった。

 北海道の留萌(るもい)市の人口は2万2千、それでも本屋さんがゼロになった。そこで市民が自治体と共同作戦を練り、大手出版社の書店を開店させることに成功した。人件費も本に詳しい市民に業務委託して抑え、市も市内の公立学校の図書を購入するなどして協力、官民一体で本屋さんを再生したのだ。「書店ゼロ」は、街の文化の火を消すばかりか、教養人不在を招き、他地域からの人口流入を止めてしまう。留萌市のこの書店は、毎月1千万円の売り上げ、経営が順調らしい。

 「書店ゼロ自治体」は、留萌市の実例を研究していただきたい。自治体が本気になれば、市民の活力を生かせば、文化の火を消さずにすむ好例を留萌市に見ることができる。北海道、長野、福島、沖縄等に書店のない自治体が多い。議員や役人は、何も考えないのだろうか。この不感症の人たちでは文化的魅力のある自治体などつくれるはずもなかろう。

 図書館に新刊本が入るのに時間がかかる。一度は立ち読みして、気に入って購入するパターンは私だけなのか、本の題名だけでアマゾンで注文する心理は私には理解できない。雑誌や新聞の書評を読み、興味をもって購入する場合もあるが、たいていは評判だおれ、自分が手に取って納得してから買うに越したことはない。評者の感性と読者の感性は異なる。だから本屋さんで自分が確かめて買うべきだと思う。なのに、「書店ゼロ」では困る。

 全国で420市町村と行政区に本屋さんがない。書店の売り上げの6割から7割は雑誌が占める。この市場をコンビニに持って行かれたのでは経営がおぼつかない。自治体は「知」の危機意識を持ち、どうすれば本屋さんを再生できるかを考えるべきである。知識人が魅力を感じない自治体に明日はない、と私は考える。

 子どもたちの眼が悪くなっていると聞く。読書のためかと思いきや、スマホやテレビでのゲームが原因だという。次から次へと面白いソフトが売り出されるため、どんどん子どもたちがなびく。ゲーム遊びをどうすれば読書へと誘うことができるのだろうか。

 本の楽しさ、面白さ、家庭環境もあろうが、自治体の教育委員会が危機感を持って各学校長を指導すべきである。書店は街から消えても、ゲームソフトを売る店は消えない。日本人の劣化を誰が心配しているのだろうか。

(日体大理事長、松浪健四郎)

関連する記事

遺構が世界遺産に登録されている那覇市の首里城の火災は正殿など7棟にも及んだ。私も数回訪ねており、衝撃と落胆に包まれている沖縄県民と同じ気持ちである。 歴史文化や観光とし…

続きを読む

「バス」というと、どのようなバスをイメージされるでしょうか。お客さまを乗せ、各バス停を巡回する…。当社調べでは、身近な交通手段ということもあってか、まず「路線バス」を思い…

続きを読む

通訳ガイド国家資格制度については、無資格でも有料の通訳案内をできるようにする改正通訳案内士法が 2018 年 1 月 4 日から施行され、「通訳案内士」の有資格者の業務独…

続きを読む

新聞ご購読のお申込み  ベストセレクション

 メルマガ申し込み

注目のコンテンツ

第32回「にっぽんの温泉100選」発表!(2018年12月15日号発表)

  • 1位草津、2位別府八湯、3位下呂

2018年度「5つ星の宿」発表!(2018年12月15日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」は?

第32回「にっぽんの温泉100選・選んだ理由別ベスト100」(2019年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「泉質」「見所・体験の充実」「郷土の食文化」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

18年度「部門別・旅館ホテル100選」(2019年1月12日号発表)

  • 「料理」「サービス」「風呂」「施設」「雰囲気」のベスト100軒

観光経済新聞の人材紹介

  • 旅館・ホテルの人材不足のお悩み無料相談はこちら
Visit Us On FacebookVisit Us On TwitterVisit Us On InstagramVisit Us On Youtube