【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論 91】「移民法」の制定を訴えよ 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2018年10月11日

 トランプ大統領の移民締め出し政策が、非人道的だと批判された。子どもと親を離ればなれにした非人道的であったためと、アメリカ社会は人手不足に喘(あえ)いでいるからであろう。

 特に農作業に関する人手不足は深刻、恒常的ですらある。私も留学生時代、ミシガンの農場でアルバイトした経験がある。長い畝(うね)に植えられたトマトに柄を付けたり、アスパラ刈りをした。すべて手作業、広大な農場ではアルバイト学生が手伝う。

 やがて、いやもう現実である。日本の農業、漁業、建設現場や介護施設にホテル・旅館の労働力不足は、経済を脅かせて久しい。途上国からの研修・実習制度も改め、研修生の滞在も5年間へと延長した。が、台湾や香港は10年間の滞在を認めるため、日本への研修生も減少傾向にある。しかも日本語のマスターは難しく、日本人気は下落気味であることも知っておかねばならない。

 これだけ少子化が進むと「移民法」の立法も視野に入れ、移民政策を本気で考えねば国はもとより、地方がもたなくなる。2040年には、人口500人未満となる自治体は28に上ると見込まれているのだから、移民を認めるか、それとも合併策を選択するか、どちらかだ。

 政府は、10年以上にわたって「平成の大合併」を推進させ、相当数の自治体に影響を与えてきた。が、合併特例法は、20年3月で期限切れ、延期する必要がある。人口減少は、住民サービスを悪化させるばかりか、自治体の運営すらままならなくなってしまう。小規模な自治体は、すべての面において苦しい。国や都道府県からの補助金を当て込む政治、これではその自治体の発展はない。

 救急医療や在宅医療など、住民の高齢化に対応するにしても小規模な自治体では難しい。上下水道、消防等、隣接自治体とタッグを組むにしても安心・安全な住民生活を保障するには、自治体が大きい方がスケールメリットがあっていい。連携はするけれど、税収を大きくしてくれる企業や施設があるので合併しないという自治体のエゴは通じなくなることを自覚すべき時代に突入している。

 ところが、和歌山県北山村のケースは特異である。総人口428人、和歌山県で唯一の村。しかも奈良県と三重県に囲まれていて、和歌山県の飛地となっている。

 この村を訪れてみると驚く。村のあちこちにミカンが植えられているのだが、このミカンは世界で北山村でしか植えられていない「じゃばら」というユズやカボスのような高酸かんきつ類だ。この「じゃばら」は、毎年、村に2億円以上の収益をもたらす。花粉症に絶大な効果があるためだ。

 人気のある「じゃばら酒」「じゃばらジュース」は、毎年、売り上げを伸ばし、村の基幹産業となっている。村には「じゃばら神社」があり、特産品の「じゃばら」を敬う。かつては新宮まで北山川を筏(いかだ)で木材を運ぶ村だったが、現在は「じゃばら村」となっている。道の駅おくとろに入ると、各種の土産品があり、観光の村という印象を受ける。おくとろ温泉もあり、宿泊も可能である。「じゃばら」だけで生き残る珍しい村であろう。

 幾度も合併話があったというが、飛地ゆえかまとまらず現在に至る。が、人口減少の波は大きく、三重県熊野市との連携が不可欠となっているようだ。小中2校があるけれど高校はなく、若者が外へ出て行ってしまう。高齢化率は高く、やがて人手不足に陥ってしまう可能性が高いと思われた。

 財政的に恵まれようとも環境によっては、自治体は苦しまねばならないケースを北山村で見ることができた。ここでは合併策は困難で移民策こそが村を救う気がしてならなかった。「じゃばら」の生産も人手が必要である。将来、この村はどうなるのか、この特産品を誰が守るのか、村人でなくとも心配になる。

 地方自治体は、声を一つにして政府に「移民法」の制定を訴えるべきである。この国の経済を維持するためには、まず地方を護(まも)らねばならない。労働力不足は、深刻になるばかりで、まず一次産業界に危機感がある。研修制度では追い付かず、移民を認めねばならなくなっている。

 (日体大理事長、松浪健四郎)

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