「心と体を癒す生活文化」 日本温泉協会、ユネスコ世界遺産登録に向けて「温泉文化」を定義づけ


日本温泉協会が設置した有識者委員会(写真は4月の初会合)

フィンランド式サウナの伝統 先行事例を参考に

 日本温泉協会(笹本森雄会長)が設置した有識者検討会は11日、「温泉文化」のユネスコ無形文化遺産への早期登録を目指す提言の中間取りまとめを発表した。温泉文化を「自然の恵みである温泉を通して、心と体を癒やす、日本国民全体の幅広い生活文化」と定義づけて、2020年12月に登録された「フィンランド式サウナの伝統」を参考に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)への提案を準備するよう求めている。

 日本温泉協会は、「温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録に向けた検討会」(座長・青柳正規元文化庁長官)を4月に設置し、学術経験者や温泉関係者らを委員として、登録に必要となる温泉文化の定義や法的保護措置などについて検討していた。
中間取りまとめは、登録の意義について、温泉地の人口減少や高齢化の進展、コロナ禍で経営に打撃を受けた温泉旅館・ホテルの働き手不足や後継者不足など、「急速な社会変容、観光地の多様化の中で、温泉地で失われていく伝統も少なくない」として、温泉文化を定義づけ、無形文化遺産への登録を契機に保護、継承に取り組む必要があると指摘した。

 温泉文化の定義としては、風土記などの歴史書における温泉の記述に始まり、中世、近世、そして現代の湯治や観光に至る温泉の歴史を踏まえ、多様な入浴法はもとより、温泉を管理する「湯守」、温泉の湯や熱を生かした調理、栽培、生活習慣などさまざまな文化が育まれたとして、「日本国民全体の幅広い生活文化」と位置付けた。

 先行事例である「フィンランド式サウナの伝統」については、国民全体に広がる、生活に不可欠な文化という点で、「温泉文化との親和性が高い」と指摘。提案書を作成する上で参考にすることが有効と提言した。

 登録の条件となる国内法での保護については、文化財保護法の無形文化財としての保護で目指すべきと結論づけた。無形文化財の登録には、「定義」「わざ」「担い手」を特定する必要があり、日本全国の温泉地や旅館・ホテルなどを対象とした調査、国民を対象とした意識調査などの実施を要望した。

 温泉に関する調査の成果と共に、各温泉地の魅力などを整理し、国内外へ発信することで、温泉文化に関する知識の周知、登録への機運醸成を期待した。

 中間取りまとめは最後に、「温泉文化のユネスコ無形文化遺産への早期登録は、失われつつある温泉地とその担い手である温泉地で働く人々の活気を取り戻し、温泉地の再生に大きく寄与することが期待される。また、登録に至るプロセスにおいて、積極的な情報発信を行うことで、改めて日本固有の文化である温泉文化の再認識が図られ、次代へと保護・継承されていくことを強く希望する」とした。

 温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録を目指す日本温泉協会などでつくる全国推進協議会、賛同する都道府県による知事の会、国会議員の推進議員連盟では、24年のユネスコへの申請、26年の登録実現を目指している。

 

 「温泉文化のユネスコ無形文化遺産登録に向けた検討会」委員(敬称略)

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