UNWTOが東京に事務所開設、記念講演も


本保芳明氏

 国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所(本部・奈良市)は東京都渋谷区の国連大学本部ビル内に「東京事務所」を開設、これを記念し15日、同ビル内のホールで講演会を開いた。自民党の二階俊博幹事長、UNWTOのタレブ・リファイ事務局長、小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長らが講演し、観光の重要性を改めて強調した。

 講演会には関係者ら約300人が参加。国連は今年を「持続可能な観光国際年」として定めており、講演者はこのテーマをもとに持論を展開。

 主催者を代表してあいさつした本保芳明UNWTO駐日事務所代表は「奈良に本部を置いて関西を中心に活動をしていたが、観光立国から観光先進国への高いステージを目指すために東京に事務所を設けた」と開設の狙いを強調。そのうえで「観光産業のステークホルダーと緊密な連携をとっていきたい」と抱負を述べた。

 二階幹事長は「持続可能な観光と防災」をテーマに講演。外国人も被災者となった東日本大震災での対応を課題に上げ、「世界中の人に津波の脅威を知ってもらう必要がある」と指摘し、15年の国連総会で「世界津波の日」が制定されたことを評価しながら、「国際社会が津波防災の知識を深め連帯して対峙しなければならない」と訴えた。

 20年の東京五輪・パラリンピックでは多くの外国人旅行客が日本を訪れることが予想されるが、二階氏は「万が一災害が起こっても、安心・安全を守る」とし、「誰1人災害から取り残さないしなやかな国づくりをし、そうした取り組みを世界に発信していくことは(日本政府の)使命である」と力強く語った。

 リファイ事務局長は「持続可能な観光国際年のはじまり」をテーマに講演し、「観光国際年の実現には経済成長による生活水準の向上、環境や文化の維持、平和などが必要だ」との考えを示した。また、「観光は国際的に地位が向上しており、社会経済に大きな影響や効果をもたらしている」と観光の重要性を述べた。

 観光産業においてもIT化が進んでいるが、「技術は戦わずに受け入れ、知識や心構えを持ったうえでコントロールして駆使する必要がある。対峙した問題には、どう対処するかを考えたうえで課題に挑むべきである」と語った。

 また、政治的な側面にも言及。「観光は平和の構築や安定の力となっている。壁を作るよりも人をつなげ、固定的な観念をなくすことで人々の中に美しさや文化が広がり相互理解が高まる。否定的な観念は払拭するべきだ」と述べた。

 アトキンソン社長は「日本の観光業」をテーマとして講演。30年に向けて「観光産業は大きな成長が見込め、日本は観光資源大国であり観光先進国になる」と述べた。一方で、「世界で最も知られていない観光資源大国」とも語り、世界への情報発信を求めた。

 20年に訪日外国人が4千万人を目標とすることに対し「欧州からの観光客が少ないことが課題。評価は高いが実績がなく、そのギャップを埋めるべき」と指摘した。

 また、観光戦略を実現するためは諸外国と同様に「文化、スポーツ、観光が一緒の省庁が必要」と縦割り行政について意見を述べた。

 このほか、来賓であいさつした国土交通副大臣の田中良生氏は「東京に事務所を持つ自治体や専門機関との連携強化を期待する」、日本観光振興協会の山口範雄会長は「従来の観光産業のスタイルから、新しい観光産業形態を作るためのプロモーションや事業展開を行う動きを促進してほしい」と語った。

432502.AFP01タレブ・リファイ氏

本保芳明氏
本保芳明氏

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒