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 ■2004年 旅行業4社 トップ新春座談会

新時代の旅行業を模索する

近畿日本ツーリスト 社長
高橋 秀夫




東急観光 社長
野溝 憲彦


日本旅行 社長
金井 耿

JTB 社長
佐々木 隆
 ─逆風下の業界天気図はいかに─
 イラク戦争とSARSに振り回された2003年が終わった。年が明けて2004年。今年は旅行業界にとってどんな1年になるのだろうか。観光経済新聞恒例の旅行業4社トップによる新春座談会。21回目を迎えた今回は、出席者の方々に事前にアンケートをとり、回答の中身を深く掘り下げる形式で話を進めた。「今年の旅行業界の動きは」の問いには「薄曇り」が大勢を占めたが、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の成功は「努力次第でなる」と、将来に希望を持たせる内容で意見が一致した。
(現状で該当すると思うものに○印でお答え下さい)
一、 今年の景気はどう動くと思いますか。 
回復基調  横ばい  やや減速
一、 観光は21世紀のリーディングビジネスになると思いますか。 
なる  方向にある  現状では難しい
一、 「観光立国」になるかどうか。 
近くなる  5年位かかる  現状は難しい
一、

ビジット・ジャパン・キャンペーン(2010年に外人観光客1,000万人の達成)は成功するかどうか。
成功する  努力次第  かなり厳しい

一、 今年の旅行業界の動きは?
晴れ  薄曇り  時に雨  雨
  (以上を参考にお話をうかがいたいと存じます)
※座談会は以上のアンケートをもとに進行しました

04年の景気はどう動くか──


(司会)景気が底離れしたと言われるが、経営環境はなお厳しい。まず、04年の景気はどう動くか、それぞれの展望をお聞きしたい。野溝社長は景気が回復基調から横ばいになると回答している。

野溝 02年ごろから輸出産業を中心に堅調な回復をしてきた日本経済だが、全体的にはゼロ周辺での成長ベースだろうと見ている。雇用所得が大変厳しい状況にある。可処分所得も雇用者の報酬ほどではないだろうが、落ち込むと見ている。ただ、旅行を含めたサービス産業の個人消費は堅調に推移するだろう。
 旅行業単体で考えると、国内旅行は前年並みだろう。海外旅行は前年に対して50%プラスアルファ程度の回復しかないと見ている。ただ、訪日旅行は13・5%(03年8月の前年比)増加している実績から見ると、今後は増加の傾向にあることは確かだ。海外旅行市場は高齢者によって支えられる状況だと考えているが、年金や生命保険の金利低下が高齢者の生活にどう影響するか等、注視していかなければならない。

  ──金井社長は、景気は回復基調だと、一番いい線を出している。
金井 アンケートの答えはかなり願望を込めて書いたが(笑い)、最近の動きをみると、株価が一時よりよくなっているし、企業業績もいろいろな不安要因はあるが、かなりよくなっている。ある程度の回復基調は望めるのではないか。ただ、かつてのようにすごい勢いでとは望むべくもない。そこそこ安定した形で回復基調が続く──ことをぜひ実現してほしい(笑い)。可能性はないわけではないと思っている。
 旅行に関しては、不安な要素が個人や家庭にかぶさっているという要因はあるが、ここ2年ほど、9・11やイラク、SARSなどで相当旅行を手控えてきた。予測もしなかったヘンな事態が起こらなければ、しばらくたまっていた旅行へのマグマが、引き出しようによっては、どっと出てくる可能性も十分ある。経済全般 の順調な回復と、平和・安全な状況の持続ができれば、旅行需要は回復可能だと思う。

 
──高橋社長は、景気は横ばいと見ている。
高橋 株価が安定してきたし、新聞等の報道では経済は緩やかな回復基調とある。おそらくそういう形で進むだろう。
 海外旅行はここ3年間、9・11に始まり、バリ島のテロ、SARSで極端に落ち込んでいる。しかし景気さえよくなれば、その反動で必ず回復すると思う。我々が守りに入っていると、今までと同じように停滞が続く。守りから攻めに転じて、前向きにやっていけば海外旅行については必ず回復するだろう。
 国内については横ばい。航空会社の2社体制の中で、イールド志向が強くなって、販売価格がやや上がっている。一時的には国内のロングポーションで、ちょっとお客さまが落ち込むと思う。


 
──佐々木社長も「回復基調」と強気だ。
佐々木 金井社長と同じで願望が入っている。日本経済全体については先ほど金井社長が言われたのと同じだが、個々のマーケットを見ると、団塊の世代が消費をリードし始め、熟年層がますます個人消費のけん引役となるのではないかという気がする。この層には、子どもに財産を残さないという考え方が浸透している。健康なうちにいろいろなところに行きたい、体験したいと、旅行に対する意欲はますます強まるのではないかという気がする。


 
──高額商品がかなり売れるということか。
佐々木 ひとつは今まで以上に高級・高額のもの。もうひとつは今までとは違ってサービスの質が深いもの。さらにもうひとつはオフ期の商品。その3つだと思う。03年度は過去に経験したことがないほどひどい状態だった。今後については、たとえSARSが再発せず、景気が戻ったとしても、我々が今までやってきたことだけでは通 用しないのではないかという危惧を感じ始めている。03年度は我が社にとって、ターニングポイントだったという感じがする。9・11以降、こういうことが当たり前のように起きる時代に変わったのだと覚悟しなければならない。この認識を前提にして、企業変革を進めたいと思う。


 
──旅行業界の04年度の動きはどうなるか。野溝社長は「晴れ」。そのほかの3人は「薄曇り」となっている。
野溝 企業のリストラ等で給料は下がっているが、個人消費は伸びるだろうという考えだ。旅行に対する潜在的な需要はかなりある。これが方法によっては出てくる。特に熟年層を中心に、相当動く。
金井 私は薄曇り説だ。先ほども言ったが、たまったマグマが出てくる可能性はある。旅行全体の動きのボリュームはすごく増えると思うが、業界ということで言うと、我々の手から離れる部分も結構ある。そういう意味では全体の旅行が増えても我々の業界がそれで潤う、快晴になるというところまではなかなかいかない。
高橋 7~9月の第3四半期はSARSの影響でかなり落ち込んだ。10~12月になって回復はかなり遅れたが、少し戻った。1~3月になると前年を超えるだろう。この状況が続くと思う。そこから考えると薄曇りと考えていいのではないか。海外旅行はここ3年間で急激に減少している。その反動として必ず伸びると考えている。
金井 「どしゃぶり」から「薄曇り」だから、相当よくなると考えていい。
高橋 02年並みだと思う。00年ぐらいまでになれば「晴れ」と言ってもいい。目標は00年のところまで戻すことだ。
佐々木 環境は晴れでも我が社は曇りですね(笑い)。正直言ってそんな認識だ。
金井 じゃあ、うちは雨ですよ(笑)。
佐々木 総合旅行会社と言われている我々の正業が本当に曲がり角だから、多少環境が明るくなっても、それで会社が明るくなるほど力強いものではないと思っている。従って薄曇りだ。


今年の重点施策は──

 ──このような経営環境の中で、それぞれの会社は何を行っていくのか。重点施策は何か。
佐々木 マーケットがモザイクのように多様化・複雑化してきたので、会社の体制も徹底的にそれに合わせた事業体に変えなければならない。今、我々が有望だと思うのは、個人の世界で言うと、時間とお金がある方々に対する新しい商品・サービスの提供。一方、海外旅行の素材提供型販売体系の強化も目指していこうと思う。セールス部隊は、SP事業と言った企業の販売促進のお手伝いをする方向に向かわないといけない。イベント、コンベンションへの取り組みを強化してきているのもその一環だ。単なる招待旅行や職場旅行ではもうだめだと考えている。 今言ったことをJTB単体だけで乗り切ろうとは思っていない。専門的なグループ会社をどんどん作っていき、それぞれのマーケットに対応する。その集合体がJTBという考え方に切り換えようとしている。


 
──従来路線は変えざるを得ないということか。
佐々木 県庁所在地の支店はその機能から総合型が好ましいが、少なくとも東京は絶対に変えなければだめだ。全国一律の大量 生産、効率化追求だけでは通用しないという考えだ。従ってJTB単体ですべてを取り扱うのではなく、マーケット別 のミニカンパニーの集合体で構成されるグループを目指したい。今、分析をしている最中だ。
高橋 この3~4年で、今まで40年、50年と続けてきた枠組みががらっと変わってしまった。団体旅行しかり。店頭販売においても、中抜き傾向が進み、我々が代売と呼んでいるものが急激な勢いで落ち込んでいる。店頭では商品開発に力を入れて、付加価値の高い商品をつくっていくしかない。
 私どもは3年前に「フォーカス10リオン」という構想を打ち出した。まずお客さまをしっかり持たないことには企業が成り立たない。全国1千万人を私たちのお客さまにしようと、店頭ではCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)戦略でお客さまとの強い関係づくりを行っている。
 団体については「プロデュース業への転換」を目指し、広い意味でのE・C・C(イベント・コンベンション・コングレス)を当社成長の核と位 置付けている。そのためのマーケティング力やプロデュース力を高めるため、広告業との融合も考えている。
 もうひとつは、クラブツーリズムの、会員型の旅行。この3つを営業の柱として、エージェント業からプロデュース業への転換を図っていきたい。それには、お客さまとの関係づくりをどう徹底してやっていくか。それしか生き残る道はないのではないか。
金井 私どもは一昨年に新しいビジョンを打ち出し、03年度を5カ年計画の初年度としてスタートしたわけだが、先ほど来の話のように初年度、船出したとたんにすごい嵐に襲われたという状況になっている。実質的に5カ年計画が4カ年計画に変わらざるを得ないというところにまず置かれた。ただ、ビジョンとして掲げたものをあくまでも07年度に実現しようということに変化はない。5カ年の2年目でありながら、実質初年度的な位 置付けでもう一度取り組みを深めることが一番の要諦ではないかと思う。
 一昨年来、システムを近代的なものに変えるとか、いろんなことをやりかけてきた。04年度にはそれらのうちの一部だが、実際に使用開始を迎える。イノベーションが具体的に進展するわけだ。そこを軸にして我々の体質を、マーケットの変化に合わせてどう変えるのか、を一番の重点課題として取り組む必要がある。05年が創業100周年ということもあるし、それを5カ年計画の第1フェーズの仕上げのような位 置付けにしている。04年はそこに向けての助走段階だ。プレ100周年という位 置付けを大切に考えて、具体的な施策に取り組みたい。「長きがゆえに尊からず」とも言われる。次の100年に向けて新たなスタートをどう切るかということも考えねばならないが、当面 は100周年をひとつのエポックと位置付けて、そこに向かって機運を盛り上げていく。

 
──JR西日本のTiSと合体したが、改革路線にギアが入ったと言えるか。
金井 その効果 は一巡したから、これからは一緒になった力をフルに発揮することを考えねばならない。増資も実現した。JR西日本が行う施策との連携もかなり大きなテーマになるだろうと認識している。「ディスカバー・ウエスト」というキャンペーンを行っているが、この中でも、インバウンドも含めて、協調して施策展開を考えねばならない。
野溝 私どもは昨年、東急グループの戦略に則り、“選択と集中”を実施した。1月1日付で東急ナビジョン(東京渉外営業事業)、東急ストリームライン(国際旅行&BTM事業)、東急トラベルエンタテインメント(首都圏個人旅行事業)の各社を立ち上げ、各事業部門に権限と責任を大幅に委譲し、マーケットの変化に迅速に対応できる形とした。また同じく1月1日から店舗経営指標を導入し、営業収入に対する各経費の係数管理を徹底し、販売管理費、人件費、家賃等の割合に統一基準を設けた。このような中で04年は、渉外営業に対する経営資源の集中をさらに加速していく。分社化した会社へは権限委譲を徹底し、経営と執行の分離を実践していく。また経営指標による定量 的な管理を徹底し、全支店が利益を出す体制を確立する。個人旅行販売の拡大については、渉外営業の個々人が高所得者層、可処分所得の多い層に対して付加価値の高い商品を販売していく。



 
──旅行業は他産業に比べ利益率がいい商売ではない。消費ニーズがどんどん変わり、それに即応しなければならない。04年も厳しいと思うが、「旅行総合商社」的な考え方でやるにしても、ほかの分野に、例えば金融などに進出するつもりはあるか。
佐々木 それはない。基本的には旅行業が業態の中斉核だ。過去の様々な経験からしても、ドメインが変わることはない。


 
──これから伸びそうな企業を買収することは。
佐々木 それはある。同じ旅行業でも川上と川下がある。例えば福利厚生事業を手掛けているベネフィット。我々はあれを旅行業と思っている。従来型の旅行業とは違うところに手を出しているように見えるかもしれないが、我々から見ると、ECやSPも旅行業と考えている。
高橋 近畿日本ツーリスト独自で進出というよりは、コンソーシアムという形で、異業種と一緒になってやることはあるだろう。しかし、まず本業をしっかりした上でだ。クラブツーリズムもそれなりのお客さまを持っているわけだから、旅行業を中心に業容の拡大を図らねばならない。これからの旅行業は日本だけでなく、グローバル・アライアンスが必要になるのではないか。その中から収益源が生み出せると思う。若干時間のかかる問題だが、そういうものは志向すべきだ。
金井 これから旅行会社に求められるものが幅広くなることは間違いない。しかしそれを全部自力でこなせるかというと、難しいのではないか。求められるレベルがどんどん高くなっていくからだ。そのため専門的な力を持っているところを使わせていただくという形で、一種のアライアンスだと思うが、やるべきではないか。我が社の中で一から人を育てて、専門的なレベルまで持ち上げようとすると、準備をしている間に世の中が動いてしまうことにもなりかねない。「餅は餅屋」で、専門家とうまく組んで、お客さまが求めるものに対する答えを出すというやり方をこれからはとらざるを得ない。
野溝 当社は356社、9法人からなる東急グループに属しており、アライアンスはグループ企業と日常的に行っていることから、私どもが単独でやることはありえない。また、グループ外の企業とのアライアンスを行うとすれば、当然旅行業としての参加となり、何よりも大切なのは、当社が強みを持つことである。優位 に立てる分野に特化・集中することで、様々な企業とのアライアンスも可能となる。


 
──旅行業もニュートラルな部分を共有するなどはできないものか。
佐々木 できないことはないだろう。難しい面 もあるが、それを乗り越えてやった方が良いものもありそうだ。
高橋 JTBさんは大きいから何でも独自でできるかもしれない(笑い)。我々は部門ごとにいろいろアライアンスを考えていかないと難しいだろう。ある部門はA社、また別 の部門はB社といったように、固定的に考える必要はない。必要に応じてくっついたり離れたり、その連続でいいのでは。そのぐらい柔軟に考えるべきだ。


観光立国の可能性は──

 ――20世紀はものの時代、21世紀は心の時代といわれる。観光は21世紀のリーディングビジネスになるのだろうか。野溝さんは「なる」と回答している。
野溝 物造り産業はアメリカのひと声でおかしくなったりよくなったりするが、観光ビジネスはそのようなことはない。すぐとは言わないが、長期的にはなる。あとはやり方次第だ。
  観光立国のテーマは「住んでよし、訪れてよしの国づくり」である。外国の人々が「訪れたい」「学びたい」「働きたい」「住みたい」日本となることが目標だろう。
  外国人の誘致促進に加え、国内の受け入れ体制づくりが急務であることはもちろんだし、我々としてもよい形でのビジネスにつなげていくような取り組みが必要だ。一過性の盛り上がりではなく、観光産業が21世紀の真の基幹産業となるべく、継続的な取り組みが必要だ。


 ――金井社長は「その方向にある」と回答している。
金井 我々を含めた関連の企業なり人なりのポテンシャルをもう少し上げないといけない。決して無理だということはないと思う。産業構造が劇的に変わっていることは間違いない。観光は日本の産業の大きな一翼を担える可能性を十分持っている。ただ、担うには、重い荷物を背負っても腰がふらつかないように、体力を付け無ければつぶれてしまうことにもなりかねない。体力があると認知されないと、やらせてみようということになってこない。


 ――高橋社長も「その方向にある」だが。  
高橋 観光は間違いなく21紀のリーディングビジネスになる。特に発展途上国はどんどん豊かになる。アジアもアフリカもどんどん変わってくると思う。世界が豊かになってきたら、観光ビジネスはますます栄えるだろう。2010年には国際交流人口は10億人を超えると言われている。そういう中で我々がどう変わるか、それが課題だ。そして、大いに楽しみだ。


 ――佐々木社長は「現状では難しい」と、一番厳しい回答だ。
佐々木 現状の旅行産業のレベルでは難しいような気がする。21世紀を引っ張るには、もう少し収益性と、再投資能力を持たなければだめだ。底が割れている状況に我々は追い込まれているような気がする。
 高橋社長がおっしゃるように、世界の旅行者は何倍にもなるだろうし、世界の国々にとって観光は今まで以上に需要が増してくると思う。日本は得意分野の情報処理やナノテク、生命科学とかを前面 に出すといいのではないか。
 観光立国は日本の社会を変えていくための重要な施策だと思う。そのために、相互交流が相互理解を生み、それが世界平和に役立つのだという官民挙げた地道な取り組みが必要だろう。
高橋 インバウンドは、まだ500万人ていどなのだから、今を基準にして考えれば、必ず飛躍的に伸びると思う。それで観光立国と言えるかどうかは別 問題だが。観光立国と言いながら、観光大臣がいないようでは話にならない。しっかりした、「観光立国」の基盤づくりのためにも、ぜひ実現してほしい。
佐々木 香港のSARS回復後のイベントに出てつくづく感じたが、日本は英語への対応を間違えた。世界の情報系から孤立している。もっと積極的に取り組んで行くことが必要だ。世界の情報系にブッキングし、日本の魅力ある観光案内をご覧になれるようになるといい。
金井 観光に関わっている人だけでなく、国民全体にそういう意見ができてこないと、観光立国ということにはなかなかならないのではないか。製造業が空洞化する中で、観光で雇用が促進され、食べていけることが可能なのだと実感されないと、国全体が外国人を迎えて栄えようという意識につながらない。そのベースをどう作るか。最低5年はかかると思うし、その5年間が勝負という感じがする。
野溝 日本経済の長期低迷の中で、政府にはインバウンドを経済活性化の起爆剤だけで終わらず、恒久的な拡大に向けて、観光予算の増加や各界への指導的役割をお願いしたい。我々業界においては、インバウンドの振興は経済的・社会的に有意義であるだけでなく、21世紀の旅行事業を支える大きな柱となることを認識し、今までの「待ち」から「攻め」へと発想を転換し、事業自体を魅力あるものにする努力をするべきだ。


 ――日本から海外に出ていく方が世界10位、入ってくる方が35位。これではアンバランスだし、外国に行くと日本を知らない人が多すぎる。そういうことで政府が観光立国担当大臣を作り、担当セクションまで置いて、ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)を強力に推進している。予算もだんだん、わずかだがついてきた。2010年にインを倍増の1千万人にしようとしているが、皆さんのアンケートでは全員「努力次第ではなるだろう」だ。その理由はなんだろう
佐々木 日本のデスティネーションとしての魅力の問題だ。今、急激に伸びている東南アジアや中国の方々には、アジアの中で最初に近代化した国家として日本を一度は見たいという明快な欲望がある。だが、欧米の方々ははっきり言って、中国との比較において、日本をほとんどワールドワイドの観光のデスティネーションとして評価していない。アピールと景観作りが肝腎だ。
野溝 外国人の誘致促進に加え、受け入れ側の体制づくりを行うことが急務だ。またインバウンド・ツーリズムの振興を我々の業界だけで行うのは限界がある。各業界と一緒になって真剣に取り組む必要がある。各業界においても、その必要性を認識し、それぞれの施策・行動の中に、日本で一番欠けているホスピタリティの精神をぜひとも取り入れていただきたい。
 振興策は「誰かがやってくれるだろう」ではなく、国民一人ひとりが、「自分たちがやるのだ」という意識を持つ必要がある。
 旅行業界は、インバウンド・ツーリズムに対する過去の取り組み方、すなわち目先の利益のみを追い続けてきた。これを謙虚に反省し、新たな将来展望をッ開くことに努力をしなければならない。
 旅行者の保護、健全で安心できる旅行環境の確保、受け入れ箇所でのリスク管理など、我々が取得している情報やビジネス体験を関係業界と共有し、必要な改善は積極的に働きかけるなど、官民挙げたVJCの推進役を務めるべきだ。
高橋 1千万人で観光立国と言えるのだろうか。スペインは人口と同じぐらいの旅行者がいる。それぐらいになって初めて観光立国と言えるのではないか。観光立国というのなら、予算が20億や30億ではなく、その10倍はないといけない。10倍でも足りないくらいだ。1千億円ぐらい取って、海外でもう少しプロモーションをやって、日本の魅力を世界に伝えなければならない。同時に、観光に対する国民の理解が必要で、もっともっと啓蒙することが大切である。


 ――不況の中で自助努力にも限界がきている。魅力ある街作りをするには、官がある程度の補助を出さないといけない。  
金井

SARS問題で世界が騒いでいる時、日本には患者がいないのに、アジアのほかの国と同様、「危ないのではないか」と思われ、外国人観光客がぱたっと来なくなった。国にお金があれば、「違うんだ」というPRがきちんとできたはずだ。


 ――総理が本当にやる気なら、1千億や2千億はわけないはずだ。もう一歩追い込まねばならない。  

高橋 投資効果は十分あると思うし、効果 のある使い方を考えなければならない。
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