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 ■観光業界人インタビュー 第2422号≪2007年5月31日(木)発行≫掲載
コミュニティサイト構築、経営問題解決の糸口に
元気な経営事例を研究し、新しいビジネスモデル作る


全旅連次期会長
佐藤信幸氏

全国旅館生活衛生同業組合連合会(全旅連)の第8代会長に佐藤信幸副会長、山形県旅館生活衛生同業組合理事長が就任する。2月8日の会長選挙(信任投票)で圧倒的多数の支持を得て信任、6月5日に開かれる総会で正式に就任する。2年間の任期中、2万軒の組合員を抱える組織をどうかじ取りするのか。総・大会を前に佐藤次期会長に聞いた。

──会長就任を前に、現在の心境を。
今まで全旅連でいろいろな仕事をさせてもらった。青年部の委員、青年部長。青年部を卒業してからは山形県の理事長や東北のブロック長に就かせていただいた。

ただ、全旅連の会長となると、これまで以上に対外的なことがいろいろある。そういう面はまだまだ勉強をしていかねばならない。小原さんという素晴らしい方から引き継ぐわけだから、これから気を引き締めてがんばらねばならない。

──会長としてまず、一番にやりたいことは。
全旅連の組合員数がかつての3万軒から2万軒に減ってしまっている。このまま国内旅行の低迷が続くと、さらに軒数が減る。加えて個々の経営の問題。改善を図らねば、さらに軒数が減ることになる。

国内旅行の活性化と、個々の旅館の経営内容の改善。この2つを行いたい。

経営問題については、今までも経営改善・金融委員会の中で、宿の金融問題に取り組んできたが、これは継続してやらねばならない。

さらに、金融問題とは別の、個々の旅館の経営内容を改善するという問題に取り組む。オペレーションの仕組みを改善しなければならないが、その前提として、旅館経営の基準となる数値を明確にしなければならないと考えている。

原価率や人件費率などの数値について、分かりやすい標準モデルを構築しようと考えている。

ある旅館の決算書を見せてもらったが、材料費の中にパートの人件費や外注費が入っていた。原価率20%が高いとか安いとかの話になっても、原価の定義が違えば同じ20%でも意味が全く違ってくる。まず、それを統一化したい。統一して初めてよそと数字を比較できる。数字を比較することで、初めて自分の旅館がどの位置にあるかが分かり、改善に向けて取り組める。

基準の数値、「ここはこうあるべきだ」という旅館業の経営基本数値をできるだけ早く明確にしたい。

そしてその次は、オペレーションについてのビジネスモデルを構築したい。今まで新築やリニューアルした施設の見学会は行っていたが、そうではなく、既存の施設でお客さまの評判のいい宿、利益が上がっている宿。そういうところを見る勉強会を開きたい。

この間、ある温泉地の小さな旅館にうかがったのだが、館内のレストランで宿泊の受付も行っていた。私はコーヒーだけを注文したが、その横では別のお客さんが鉄板焼きを食べていた。1カ所で宿泊の受付とレストランと喫茶と、3種類の客に対応している。

昔の旅館はそんなふうに、ひとつの施設をいろいろな用途で何回転もしながら使ってきたが、今は会食場、二次会どころと分かれてしまい、しかもほとんど使わない施設もできてしまっている。稼働率が極めて悪い。お客さまがいない施設は電気を消しているから雰囲気も悪い。我々自身がそういう施設を作ってしまっている。

我々、全旅連の仲間には、会合を行う場所や、会合での宿泊場所を決定する権限を持つ人が多い。しかし、その人たちが、不便だとか、アクセスが悪いとか、料金が高いとかの理由で旅館を使わず、都市ホテルを使っているケースが結構多い。

我々が率先して旅館を使うべきではないか。同業他社を実際に見て、勉強して、切磋琢磨して、磨き上げることで、初めてお客さまに来ていただけるような施設ができてくるのではないか。我々自身がもっと旅館を使おう、と強調したい。

──立候補の所信表明で、全旅連2万軒のスケールメリットを生かした活動をしたいと言っていたが、具体的には。
インターネットのコミュニティサイトを構築したい。

全旅連ではホームページ「宿ネット」を構築しており、経営における情報交換の場として機能している。ただ、話題が一過性で終わっており、ひとつの話題が終わるとすぐ別の話題に移ってしまっている。情報が蓄積されていない。

私の構想では、それとは別に、全旅連の組合員だけが見られる会員制のコミュニティサイトを構築し、旅館経営にかかわる情報やノウハウを投稿してもらう。「苦情処理」「建築」「後継者問題」など、いくつかの項目に分け、ここに来れば旅館経営の問題解決の糸口となる、というものを目指す。2万軒の会員がいるわけだから、サイトにおける広告収入も相当期待できる。

──新体制の部会はどんなものを。
先ほどの経営改善・金融委員会は、岩井美晴委員長や小原さんのご指導のもと継続したい。厚生部会、政策部会も従来のまま残したい。

このほか新しいものとして、先ほど話に出た新しいビジネスモデルを探るビジネスモデル部会を立ち上げたい。部会長は北海道の野口秀夫副会長にお願いしたいと考えている。

さらにインターネットについては、岡山県の古林伸美さんを中心に、従来の「宿ネット」に加えて、今、話に出たコミュニティサイトの構築に取り組んでもらいたいと考えている。

──旅館3団体の統合問題はどう対処するか。
我々全旅連は厚生労働省から指導を受けているが、国内旅行の活性化や外国人を受け入れるインバウンドの問題については、業界ぐるみで取り組まねばならないと考えている。業界を活性化させる意味では、一緒になるべきだ。

──日観連と国観連の合併が延期になったが、感想は。
今、私が申し上げる立場ではないと思います。

──青年部と女性経営者の会との連携は。
これからさらに強化したい。特に集客の手段として、インターネットが今後ますます重要になる。効果的な活用方法について若い人たちの力を借りたいと思う。

青年部、女性経営者のほか、国観連、日観連、温泉協会など、業界のあらゆる組織と連携を深めていきたい。他の団体と連携を保ちながら、協力しあい、業界の諸問題への対策を打っていきたい。レジオネラ属菌などの問題は厚生労働省とつながりのある我々から国観連や日観連にしっかり情報を伝えなければと考えている。

──業界に異業種やファンドの参入が目立っている。地域の雰囲気や均衡を損ねるという声もあるが。
安売り競争で周囲の旅館が疲弊し、温泉地全体がダメになるというケースが現実問題としてある。料金を極端に下げるのではなく、施設の持ち味を生かして活性化させるというやり方ならば問題はないのだろうが。全旅連としては、新規参入を排除するのではなく、周りががんばるための情報提供をしなくてはならないだろう。

地方都市でも全国チェーンがどんどん進出し、既存の施設の経営が厳しくなってきている。我々としては、全国の元気に経営している旅館・ホテルの事例にスポットを当て、ビジネスモデルとして紹介する事業を推し進めていきたい。

──全国大会に向けて、組合員に一言。
会場は日本最古の温泉といわれる道後。我々の生業を見つめ直すのに絶好の舞台だと思う。全国の方々と経営について意見を述べ合い切磋琢磨して、自館の活性化につなげてほしい。

【プロフィール】
佐藤 信幸氏(さとう・のぶゆき)1953年山形県上山市生まれ。76年日本大学法学部卒業後、株式会社旅館古窯に入社、常務取締役に就任。93年同社の代表取締役社長に就任(現任)。全旅連では青年部部長、シルバースター登録審査委員長、総務財務部会長、副会長などを歴任。その他の公職としては、山形県旅館生活衛生同業組合理事長、山形県観光物産協会副会長、国際観光旅館連盟理事など(いずれも現任)。


【聞き手・森田淳】
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