ＩＲの効果を説く、誘致に熱心な自治体の首長（左から岩倉、蝦名、辻、仁坂、尾花、千代松の各氏）
「日本型」の可能性探る。 IR議連、実施法の成立に意欲
カジノを含む統合型リゾート（ＩＲ）の誘致に向け、日本でのあり方を議論するシンポジウムが１０、１１の両日、東京・六本木のグランドハイアット東京で開かれた。海外でカジノなどを運営する事業者やＩＲの誘致に関心を示す日本の自治体関係者など約４５０人が集まった。
これは博報堂などが開いた「ジャパン・ゲーミング・コングレス」。
冒頭あいさつした、ＩＲ議員連盟で事務局長を務めた萩生田光一内閣官房副長官は、日本型ＩＲの実現に向け努力することや最大の目的は観光振興であることを強調すると共に、「ギャンブル依存症に対するケアと制度の大枠の議論の両方を同時に進めることで国民の懸念にしっかりと応えていきたい」と述べた。
また、ＩＲ議連の細田博之会長は日本の観光産業振興の観点からＩＲの推進が不可欠とし、日本型ＩＲの実現に意欲を示した。
１０日はＩＲ議連の与野党メンバーが出席し、それぞれの立場から意見を述べた。岩屋毅幹事長（自民）はカジノの制度設計などを盛り込んだＩＲ実施法案について、「夏までに成案を作り、議論を深め、秋に国会が開かれればそこで提出し、成立させたい。議連として政府を支える」と強調した。
西村康稔事務局長（同）は「国際観光で日本が中心になれるよう、大人の健全なエンターテインメントとして、一定のルールのもとで解禁を」を訴えた。遠山清彦副幹事長（公明）は「今年中の成立を目指すというのが（党の）基本的な方向性だ。日本は後発なので、ジャパニーズオリジナルを取り入れるべきだ。（ＩＲの）新しいトレンドを作る意気込みが必要」と指摘した。
玉木雄一郎副会長（民進）は国民の理解を得ることを課題に挙げると共に、党執行部がカジノに慎重なことを踏まえ「法案が出た際は、円滑に成立するよう党内調整を図りたい」と述べた。このほか、石関貴史副幹事長（同）、小沢鋭仁副会長（日本維新の党）、松浪健太副会長（同）も参加した。
首長ら、地元の優位性アピール
１１日に開かれたセッション「ＩＲの場所と規模―地方か観光地かの選定についての考察」には、ＩＲ誘致を目指す自治体の首長らが登壇。ＩＲ候補地としての地元の優位性と魅力をアピールし、世界から訪れたＩＲオペレーター（事業者）幹部らに連携を呼びかけた。
岩倉博文・苫小牧市長、蛯名大也・釧路市長、辻泰弘・北海道副知事、仁坂吉伸・和歌山県知事、尾花正啓・和歌山市長、千代松大耕・和泉佐野市長の６人が登壇。電通ＩＲ・観光プロジェクト・コンサルティングディレクターの岡部智氏が司会進行を務めた。
岩倉市長は新千歳空港に近い苫小牧市の好立地を強調。「苫小牧をハブに、北海道７空港のハンドリングコンセッション、高速道路網、高速鉄道網の整備により、北海道全域の広域観光ネットワークを形成したい」とした。蛯名市長は、「阿寒湖を中核に、温泉とアイヌ先住民族の文化を生かした持続可能なローカルカジノをつくり、地方創生に生かしたい」と述べた。
両市長の話を受けて、辻副知事は「アジア随一のウインターリゾート、明瞭な四季と美しく雄大な風景は『世界に誇る北海道価値』」とアピールした。
また、仁坂知事が「日本にはリゾート型ＩＲが適している。関西空港からも近く、温泉もある和歌山はそれにふさわしい」と強調すると、尾花市長も「和歌山マリーナシティは既に全てのインフラが整っており、ＩＲ施設用地１５ヘクタールも確保済みで、すぐに着工できる」と続いた。
千代松市長は「泉佐野市は２４時間眠らない空港である関西空港の対岸に位置している。京都、奈良、神戸、和歌山など関西圏観光の玄関口であり、宿泊客の外国人比率が高い。早朝便、深夜便を利用するインバウンド客に１分１秒でも長く日本で楽しんでいただける機会を提供したい」と話した。
