財源創出、関係業界「出国税」に一定の理解


 観光庁は、インバウンドの推進などで増加する財政需要に対し、観光施策の新たな財源の創出を検討している。「出入国」「航空旅行」「宿泊」のいずれかで旅行者に課税、課金する手法を軸に有識者会議で議論。観光業界へのヒアリングでは、日本人、外国人を問わずに徴収する場合、航空旅行、宿泊に伴う徴収には反対意見が目立ち、「出国税」など出入国に伴う徴収には、旅行需要への影響が懸念されているが、確保した財源の使途などに条件を付けた上で一定の理解を示す意見が多かった。

 新たな財源の確保策は、来年度の導入を視野に検討されている。有識者会議「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」(座長・山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)は9月15日の初会合以降、9月28日、10月5日に開催した。10月末にも中間報告として方向性を示す。

 有識者会議では、国際的な分類、諸外国の制度を参考として、出入国、航空旅行、宿泊、それぞれの行為に課税、課金する手法への意見を観光業界に聞いた。対象は日本旅行業協会、全国旅行業協会、日本旅館協会、日本ホテル協会、全日本シティホテル連盟、日本航空、全日本空輸、日本外航客船協会など。航空分野ではLCC(格安航空会社)、海外の航空会社も対象にした。

 ヒアリングの結果では、新たな観光財源の確保の必要性には理解が示されたが、課税、課金の類型のうち航空旅行、宿泊に関しては、関係業界が反対した。課税などで考慮すべき国際社会の原則「内外無差別」に立って日本人、外国人を区別せずに負担を求める場合、航空旅行では、国内線の旅客から徴収することに慎重な意見が多かった。宿泊に伴う徴収では、一部の自治体が宿泊税を導入していることから、二重の負担となることが問題視された。

 出入国への課税、課金については、旅行、航空、海運の業界を中心に意見を聞いた。一部では反対意見が出たが、他の類型に比べると、反対が少なく、一定の理解を示す団体、企業が多かった。ただ、外国人の訪日旅行、日本人の海外旅行の需要へのマイナスの影響を懸念する声が根強い。導入する場合でも「できるだけ低額に」「外国人だけを対象に」などの意見も寄せられた。

 確保した財源の使途について観光業界は、一般財源化せずに観光振興に目的を限定すべきとの意見でほぼ一致している。反対意見が少なかった出入国への課税、課金の場合では、旅行業界や航空業界が、負担と受益の観点から、日本人の海外旅行の振興、CIQ(出入国管理など)や航空保安の態勢強化などの施策への充当を求めた。

 有識者会議では、ヒアリングの結果を踏まえて論点を整理し、財源確保策の方向性について10月末にも中間報告としての提言をまとめる。観光庁では、中間報告を基に制度案の具体化を目指す。  

     

 
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