観光庁検討会、出国税1000円創設を提言~五輪前に財源確保


検討会の山内座長(右)が提言文を観光庁の田村長官に手渡した(写真左は観光庁の水嶋智次長)

 観光庁が設置した有識者会議「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」(座長・山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)は9日、観光施策の新たな財源の創出に向け、日本人、外国人を問わずに出国旅客に負担を求める「出国税」の創設を盛り込んだ提言を観光庁に提出した。負担額は定額で千円を超えない水準を提示。東京五輪・パラリンピックの前に財源を確保できるように2019年度までの導入を求めた。

 出国旅客を課税対象とする理由には、訪日外国人4千万人、6千万人などの目標の達成に向けて政府が講じる施策には、空港、港湾の出入国環境の整備、国際航空・海運ネットワークの拡大などが含まれ、受益との関係で一定の合理性があることを挙げた。日本人の海外旅行者も、航空路線の拡充、出入国の円滑化などの受益があると指摘した。

 負担額については、国際観光に関する近隣アジア諸国との競争環境、訪日旅行需要への影響などを考慮して、千円を超えない範囲とし、財政需要の規模を踏まえて具体化するように求めた。公平性、徴収の負担軽減の観点から、航空、船舶などの分類はせず、定額、一律の負担が適切とした。

 徴収方法は、出国旅客の9割が利用する航空に関しては、諸外国の税金や空港の施設利用料などの徴収で国際的に採用されている航空券購入時に運賃と同時に収受する方式を基本に挙げた。船舶に関しては、国際的に統一された仕組みがなく、港湾の実態を踏まえた検討を要請。事業者の徴収にかかる負担では、簡素な制度設計などを通じて軽減するように求めた。

 出国税によって確保した財源の使途では、負担者の理解が得られ、先進性や費用対効果が高い施策、地方創生など重要性の高い施策への充当を提言。ストレスのない旅行環境の整備、観光情報の入手の容易化、体験や滞在の満足度向上などへの施策を事例に挙げた。

 財源の使途を観光施策に規定する制度設計も求めた。いわゆる特定財源などのように、法律などを制定して税収の使途を規定している他の財源の事例を参考として、必要な措置を講じるように注文を付けた。財源がどのような施策に充当されているかを分かりやすく「見える化」する必要性も指摘した。

 検討会の山内座長は9日、提言文を観光庁の田村明比古長官に手渡した。山内座長は「観光を持続的に伸ばすことが一番のポイント。インバウンドを全国に行き渡らせること、それに伴ういろいろな問題の対処のために財源が必要だ」と述べた。

 提言を踏まえ、観光庁は、関係省庁との調整を経て制度案を設計。与党の税制調査会などでの議論を経て、税制改正大綱での決定を目指す。

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 検討会では、これまでの会合で関係業界へのヒアリングも行った。出国税など出入国に際して旅客に負担を求める手法について、日本旅行業協会(JATA)は、「必ずしも反対しない」との立場をとったが、日本人海外旅行の需要減退などを懸念、日本人海外旅行者の受益を確保できるかについても問題提起した。

 JATAは、米国の電子渡航認証制度(ESTA)の申請手数料のように、外国人だけを徴収の対象とする制度を要望したが、検討会は、現行の日本の出入国管理政策、国籍で税などを区別しない内外無差別を議論の前提とし、財源確保手法として採用しなかった。

 宿泊客に負担を求める手法、国内線を含む航空旅行の旅客に負担を求める手法も検討されたが、地方の宿泊税や航空機燃料税などの既存の負担との関係、受益の在り方などから観光関係団体などが反対し、検討会も採用しなかった。国の新たな財源を地方譲与税として地方に配分する案も見送られた。

 
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