観光庁、旅館の生産性向上へ優秀事例集まとめる


 観光庁は、日本旅館協会と連携し、2016年度に実施した旅館・ホテルの生産性向上を推進する事業の成果として、現場での優れた改善活動を事例集にまとめた。モデル施設やワークショップに参加した施設の具体的な取り組みをイラストや写真を交えた冊子と、ウェブ上で公開する動画で紹介。宿泊業の生産性向上への取り組みを促進し、人手不足への対策、従業員の賃金上昇、優秀な人材の確保につなげたい考えだ。

 日本旅館協会が立ち上げた「旅館ホテル生産性向上協議会」で選出したモデル旅館・ホテル8軒に対するコンサルティング事業、日本生産性本部のコンサルタントを講師に全国20地域で開催した経営者向けの生産性向上ワークショップを通じて改善活動を創出。約100件の事例を集め、このうち約20件を冊子や動画で詳しく紹介している。

 好事例を集めた冊子や動画では、旅館・ホテルが実際に取り組んだ改善の内容、改善の効果などを紹介している。

 作業の改善・標準化では、小豆島国際ホテル(香川県土庄町、120室)が、客室の準備に関して、使用頻度が少なかった茶の急須を廃止しスティック茶へ変更、冊子や絵葉書など備え付け資料の削減、使用の有無が一目で分かるアメニティグッズの包装の変更などによって作業時間を短縮した。

 さぎの湯荘(島根県安来市、20室)は、明文化されていなかった清掃の基本マニュアルを整備したほか、客室への冷水の提供を廃止してペットボトルに変更するなど省力化。愛隣館(岩手県花巻市、102室)は、チェックイン時の客室への案内についてビデオマニュアルを作成して案内時間を短縮した。

 人材育成、マルチスキル化では、金太郎温泉(富山県魚津市、90室)が、意欲的な社員に場当たり的に複数の業務を担当させることが退職を招いた経験から、社員にキャリアプラン(育成計画)を示す取り組みを開始。芝大門ホテル(東京都港区、96室)は、社員の業務ごとの習熟度合を示すスキルマップを作成し、自己評価と上司評価を突き合わせる面接でスキルアップを促した。

 シフト改善では、あぶらや燈千(長野県山ノ内町、35室)が、フロントと仲居を掛け持ちにしたことで複雑になったシフト編成の合理化に取り組んだ。シフト時間のパターン化、標準シフトの策定、編成時期の早期化などで労働時間の改善、公休取得を推進した。

 IT化・機械化では、綿善旅館(京都市、27室)が、各フロアのパントリーにタブレット端末を設置し、布団上げや客室準備などの連絡、確認をLINEに変更、フロントとの情報共有をスムーズにした。愛隣館では、コンベンションホールの清掃にリュックサックのように背負うタイプの掃除機を導入し、作業時間の短縮につなげた。

 5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)と3定(定品、定位置、定量)では、天の丸(愛知県幸田町、37室)が、備品在庫の管理に関して置き場に備品ラベルを表示して定位置化したほか、発注基準も「○△個になったら○△個発注する」のラベルを表示して、備品探しの無駄や欠品の防止につなげた。

 水光熱費の削減では、ホテルグランメール山海荘(青森県鯵ケ沢町、80室)が、社員エレベーターの横に大型モニターを設置し、水、湯、電気、油、ガスの使用量と、外気温、浴槽温度、源泉温度を表示し、無駄や問題の発見に活用している。

 事例集や動画は、ウェブサイト(http://shukuhaku-kaizen.com/)で閲覧、視聴できる。動画はテーマ別に7本、時間は各15分前後で、従業員のコメントやバックヤードの様子も収録されている。

      

 
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