環境省が全国温泉地サミット開催、首長らが活性化に向け意見交換


首長ら約50人が出席、意見交換した

 環境省は15日、東京都内で第2回「全国温泉地サミット(全国温泉地自治体首長会議)」を開き、温泉地の現状や活性化策を議論した。首長らは地域の特色に合わせた取り組みを紹介すると共に、同省に対し、温泉の多様な利用の推進と魅力向上を図るための支援措置をとるよう要望した。

 サミットは昨年5月に続いて2回目となる。市町村長ら約50人が出席した。

 冒頭あいさつした関芳弘環境副大臣は、「第1回サミット開催以降、温泉地の活性化や温泉熱の利活用などの施策を実施してきた」と述べ、国民保養温泉地の新規指定や国立公園満喫プロジェクトなどの成果を強調。そのうえで、「温泉地を有する自治体の首長らが集まり、意見交換を行うことで各地の取り組みを共有し、今後の温泉地の発展に向け新しい方向性を見いだしてほしい」と期待した。

 山本公一環境相に宛てた「温泉を活かした地域活性化・地方創生の推進に係る要望書」については、山口県長門市の大西倉雄市長(国民保養温泉地協議会会長)が趣旨を説明。要望書は温泉地活性化・観光振興策のソフト・ハード両面に対する財政的支援など7項目を盛り込み、実現を強く求めた。

 大西市長は温泉地のにぎわい創出に向けた取り組みを紹介。市の観光の中核拠点、長門湯本温泉について、2014年の宿泊客数は約18万人で、ピーク時の39万人(1984年)から半減、加えて14年1月に老舗旅館が廃業したことで、「温泉街の中心には遊休地が広がる苦しい状況に追い込まれた」という。

 状況を打破するため、星野リゾートと手を組み、まちづくり計画(マスタープラン)を策定。「自然を生かしながら魅力的な温泉街で人を集める」ことに主眼を置き、駐車場整備や回遊性の向上、川と一体となった絵になる場所づくりなどを進め、「全国トップ10に入る人気温泉地となることを目指す」と意欲を示した。

 このほか、各温泉地が地域特性に合わせた活性化策を紹介。石川県加賀市の河合篤史副市長は、山代、山中、片山津の3温泉で若者(19~22歳)に温泉を楽しんでもらう「タダ湯めぐり」の実施や回遊性を高めるための「ECO乗りクーポン」(地方創生加速化交付金事業)などの取り組みを挙げた。

 また、大分県竹田市の首藤勝次市長はクアハウス(温泉利用型健康増進施設)の整備について触れ、来年8月をめどに新拠点をオープンさせることを明らかにした。「本物のクアハウスを造り、世界に通用する個性的な温泉地を目指す」と胸を張った。

 大分県別府市の長野恭紘市長は今年11月下旬に開催する第2回「別府ONSENアカデミア」を紹介。19年のラグビーW杯日本大会、20年の東京五輪・パラリンピックを見据え、機運醸成と温泉を生かしたスポーツ観光の発展を目指し、アスリートのモニタリングなどを実施、成果をアカデミアのシンポジウムで全国の温泉地に向け提案するとした。

世界温泉地サミットでの要望書

 「温泉を活かした地域活性化・地方創生の推進に係る要望書」の項目は次の通り。

 1、魅力ある温泉地の構築を目指し、国民保養温泉地制度の充実強化をはじめ、温泉のみならず、自然、歴史、食といった地域資源を活用した温泉地活性化・観光振興策のソフト・ハード両面に対する財政的支援のみならず多角的な支援を行うこと。

 2、魅力ある温泉地を創るには、地域全体が一丸となることが重要である。国はその土台となる組織づくり、マスタープランづくり、人づくり(温泉地で働く人が温泉を学ぶなど)等を支援すること。また、温泉地と企業やNPOといった他業種が連携する新たなコンテンツ創造を支援すること。

 3、温泉地は単なる観光地のみならず、湯治などに代表されるように古くからの健康増進の場であり、温泉の効能などが期待される。湯治文化に再注目し、温泉利活用による国民の健康づくり、特に予防医療に寄与できる社会の仕組みづくり、温泉療養の仕組みや健康づくりのプログラムの構築など、先導的で先進的な個性ある政策(戦略)を支援すること。

 4、温泉利活用による予防医療・健康づくりには、バックデータとなる人体に及ぼす医科学的な効能が重要であり、官民一体となった温泉療養、飲泉等のエビデンス調査研究を行い、その結果を国内外に広く啓発すること。また、国民の心身の健康・リフレッシュなど温泉の多様な利用の推進に資するための情報発信を実施すること。

 5、世界に通用する温泉地を形成すべく、世界の温泉地と連携するなど、ONSENのブランド化を図ること。また、訪日外国人旅行客の誘致および受け入れ体制・環境整備に関する取り組みの推進並びに支援を行うこと。

 6、温泉の未利用熱のポテンシャルが膨大であることを踏まえ、温泉の未利用熱を活かす温泉地への支援の充実を図ること。

 7、全国温泉地サミットの継続開催を含め、自治体間のネットワーク構築と連携強化に関する支援協力を行うこと。

 
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