【道標 経営のヒント113】国内実習「じぶん・たび」 福島規子


 学生A「旅行プランはJTBとかのエージェントに頼めばいいんじゃないですか」

 学生B「沖縄でマリンスポーツ!これって体験型観光ですよね」

 今年度、初めて開講された2泊3日の国内実習「じぶん・たび」の授業での一コマ。

 履修者11人はほとんどが旅の初心者だ。課題は、どの観光地でも実施可能で汎用性が高く、大学生が行ってみたくなるような体験型旅行を企画するというもの。学生らはネットで検索した人気企画をもとに旅を考案してみるものの、結局はどこかで見たり、聞いたりしたことがある斬新さに欠けるものばかり。

 例えば、サイコロを投げて出た目の数だけ鉄道路線の駅を進む「サイコロ旅」。テレビのバラエティー番組でもおなじみのベタな企画だ。だが、旅の枠組みは既成品でもどこに連れて行かれるのかが分からない運任せの旅は、結構面白い。

 「やり方次第でユニークな旅になるのでは」と学生らに助け船を出す。

 学生たちがサイコロ旅の舞台として選んだのは宮崎県。県内を走る三つの鉄道路線を3チームに分かれてさまざまなミッションをクリアしながら駅を制覇していくという。

 ミッションは「地元の老人と写真を撮る」「黒木さんを探す」「カップルと写真を撮る」など地元の人の協力がないと成立しないようなディープなものを中心に30項目。地元の人とふれあう良いきっかけとなりそうだ。

 実際、実習当日に筆者が同行したチームのメンバーは「地元の5人からサインをもらう」というミッションで、ゲートボール場にいた高齢者たちと会話を交わしながらサインをもらっていた。また、無人駅で出会った女子高生の「黒木さん」や宮崎駅でデート中の「中学生カップル」など、ミッションがなければ決して関わることがなかった人たちとの出会いは貴重な経験となっていた。

 そして、ミッションをクリアしたらその都度、デジタルカメラで証拠写真を撮影する。スマートフォン(スマホ)ではなく、デジタルカメラというのがミソ。

 実は、この旅のもう一つの売りが、旅行中にはスマホを一切使わない「デジタルデトックス」。旅の途中経過のライブ中継も、インスタへの投稿も一切なし。LINEやインスタグラムの向こう側にいる人たちではなく、目の前の人と向き合うというのが狙いだ。

 9月上旬に実施した旅では「サイコロ」「デジタルデトックス」のほかにも「宮崎郷土料理を手作り」するためにコテージに泊まり、満月にあわせて「月見用の団子作り」と「キャンドル作り」のアクティビティも加わった。

 某女子学生曰く、「旅をしながら楽しいと素直に思えていた自分が嬉しい」。至極名言。

 国内実習、無事終了。

 
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