【逆境をチャンスにー旅館の再生プラン 394】成熟化時代の開発リニューアル戦略7 青木康弘


 前回に引き続き、円滑に開発リニューアル融資を得るコツについて紹介しよう。国内の旅館・ホテルマーケットも、成熟化の兆候が見え始めてきており、金融機関も新たな貸し出しに対して慎重になりつつある。しっかりと説明できるよう裏付けを持って融資申し込みをしたい。

 11、あえてリスクケースを開示する

 旅館・ホテルの経営者にとって、開発リニューアルは絶対に失敗できない投資であり、成功への期待が大きい。金融機関の印象を良くして、円滑に資金を出してほしいという思いもある。そのため、高収益が上がる強気の事業計画を作りがちだ。一方で、金融機関は保守的な性格のスタッフが多いため、そんなにうまくいくはずがないと常に疑ってかかる傾向にある。旅館・ホテルから事業計画を受け取ってもそのまま審査資料として使用することはない。若手担当者が独自にエクセルなどで収支計算をやり直してから稟議書に添付するのである。

 例えば、稼働率80%、宿泊単価2万円と設定した事業計画を提出したとしよう。金融機関の担当者は、業界平均や他館からヒアリングした数値、過去の当社の実績を参考にしながら、稼働率が75%、70%まで下がったケース、宿泊単価が1万8千円、1万5千円まで下がったケースなど複数の収支予測を作り、収支が成り立つか検証する。

 金融機関が融資審査の際に着目するのは、新しい旅館・ホテルがどれだけ高収益が得られるかではない。どんな状況に陥っても借入金の弁済がしてもらえるかどうかだけである。マーケット環境の変化や他館との競争状況、事業承継の見通し、保全手段の状況などさまざまなリスクを想定しながら最終的に可否を判断する。

 過度なリスク回避志向のある担当者が審査する場合、稼働率や宿泊単価を保守的に計算しすぎて返済計画が成り立たず、融資を断るケースもある。このような事態を避けるためにはあらかじめ通常ケースの事業計画に加え、最悪の事態を想定した事業計画(リスクケース)を提出すると良い。

 稼働率○○%、宿泊単価○○円という最悪の状況に出会っても問題なく約定弁済ができることを具体的な数値に基づいて説明した資料を融資申込時に添付すると良いだろう。

 (山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)

 
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