【私の視点 観光羅針盤111】宇宙ビジネスの始動 石森秀三


 7月31日に日本で最初の民間単独開発ロケットの打ち上げが行われた。現在、世界的に宇宙開発・利用の動きが活発化しており、特に21世紀に入ってから中国が国を挙げて宇宙開発・利用に本格参入している。そのため日本でも2008年に宇宙基本法が施行され、16年に「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)」が制定された。

 宇宙活動法は民間事業者による宇宙活動の促進と共に、国際条約履行や宇宙損害賠償の仕組みなどを明確化したもの。

 要するに民間事業者による宇宙ビジネスの活発化を奨励すると共に、国によるさまざまな規制の明確化を意図した法律だ。

 今回打ち上げられた民間単独開発ロケットMOMOは、堀江貴文氏(元ライブドア社長)が創業した宇宙ベンチャー企業「インターステラテクノロジズ(IST)」が開発した小型ロケット。

 MOMO(全長10メートル)は宇宙空間とされる高度100キロ以上への到達を任務としたロケットである(漢字の百が「もも」と読めるのが名前の由来)。今回は発射から66秒後に機体からの飛行データが途絶えたために、ISTはエンジンを緊急停止させた(到達高度は20キロ)。ISTは年内に全長17メートルの超小型人工衛星用の後継ロケットを完成させる方針をすでに公表している。

 MOMOは北海道大樹町の実験場から発射された。大樹町は1995年に千メートルの滑走路を有する多目的航空公園を開園させ、その後、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との連携協力拠点「大樹航空宇宙実験場」や展示施設「大樹町宇宙交流センターSORA」などを整備している。

 大樹町は銀河連邦(JAXA施設の立地する5市2町が加盟)による広域連携に注力している。

 私は観光革命(観光をめぐる構造的変化)に関する研究の結果として、20数年前に「2010年代のアジアで第4次観光革命(観光ビッグバン)が生じる」ことを予測し、的中させた。その際に併せて「第5次観光革命は2060年代に生じる可能性があり、その頃に宇宙旅行が本格化するだろう」と予測した。

 第3次観光革命は1960年代に起こったが、その原動力になったのはジェット旅客機であった。米国のライト兄弟がフライヤー号による世界初の有人動力飛行に成功したのは1903年のこと。

 人類初の動力飛行は12秒間で飛行距離36メートル。その半世紀後の1952年に世界初のジェット旅客機コメット(英国デ・ハビランド社)が就航した。未来のことは予測し難いが、ISTによる民間単独開発ロケット打ち上げは半世紀後における宇宙旅行の本格化に向けての狼煙(のろし)になるかもしれない。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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