【私の視点 観光羅針盤105】「宿泊税」議論の活発化 石森秀三


 日本でもようやく各地で「宿泊税」論議が活発化している。京都市では、新税導入を検討する委員会が観光振興などの特定財源を確保するために、市内のホテルや旅館の宿泊者に課税する「宿泊税」を導入すべきという答申案をまとめつつある。

 門川大作市長は5月の記者会見で、8月に委員会の最終答申が出るのでそれを受けてから、税額などの具体的制度を検討し、今年内に関係条例案を市議会に提出し、その後に総務相の同意を求めることを表明している。

 日本では2000年の地方分権一括法で「法定外目的税」が新設され、自治体が自ら使い道を決めて徴収できることになった。最初の法定外目的税は01年施行の遊漁税(山梨県富士河口湖町)で、その後に宿泊税(東京都02年施行、大阪府17年施行)、産業廃棄物税(多くの都道府県で導入)などがある。

 東京都の宿泊税は1人当たり宿泊費について、1泊1万円以上の宿泊施設から1人分につき100~200円を徴収している。京都市の場合には民泊を含めた全ての宿泊施設利用者を対象にする予定であるが、修学旅行生は免除するようだ。しかし全宿泊施設を対象にするのは全国初の宿泊税になる。

 北海道でも今年3月の道議会で観光振興に向けた新たな財源として宿泊税の導入が論議されている。高橋はるみ知事は「満足度の高い観光地づくりに向けて、今後の観光施策に必要な財源を確保する観点から検討する」と述べている。しかし宿泊業界からは税負担の公平性や旅行需要への影響などの懸念が表明されている。

 北海道内ではすでに、さまざまなかたちで法定外目的税の導入が検討された経緯がある。奥尻町の場合には奥尻島に来る人に課税する「入島税」を検討したが実現しなかった。同様に弟子屈町では摩周湖への立ち入りに対する「観光税」の導入を図ったが実現しなかった。

 同じ道内の世界的スキーリゾートであるニセコエリアに位置する倶知安町とニセコ町は「宿泊税」の同時導入の検討を行っている。両町合わせた宿泊者数は3年連続で増加しており、急増する外国人観光客を受け入れる環境整備費に充当したい考えだ。

 両町では大型宿泊施設の建設が相次いでいるが、公共交通や観光案内の充実化などが急務になっている。徴収税額などは未定であるが、両町で数億円規模の税収が想定されている。一部のペンションは観光客減につながるために反対を表明している。

 今後、北海道との調整を経て、両町で徴収額や導入時期について足並みをそろえて、来春に条例を制定し、総務相の同意を得た上で、18年のスキーシーズンまでに徴収を開始したいとのこと。

 宿泊税の導入によって特定財源が確保され、より魅力的な世界的スキーリゾートの実現につながることを期待したい。

(北海道大学観光学高等研究センター特別招聘教授)

 
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