2007年に発生したスキーバス事故を受け、突如盛り上がった「既存」高速乗合バス事業者の高速ツアーバスへの非難。詳細は後述するが、確かに彼らが言う通り、高速ツアーバスに問題点があったことは事実である一方、筋違いと取れる内容もあった。
それはともかく、前述のように当該スキーバス事故の要因の一つとして、「旅行会社による貸し切りバス事業者への無理な発注」という点があった。
社会では「下請けいじめ」というような位置づけで関心を集めていた。それを受け、スキーバス同様に旅行会社が貸し切りバス事業者に対し運行を発注(チャーター)するモデルである高速ツアーバスについて、安全性に問題があるという非難を「既存」側が繰り返していた。
そこで、国土交通省が同年秋に取りまとめた再発防止策の中に「(旅行、バス業界など)関係者間の連携を深めるため」という目的で「ツアーバス連絡協議会(仮称)」を年度内に設置するという項目が入った。おそらく、関係者の誰もが想定していなかった項目だった。
一般に「(連絡)協議会」という場合、関係者が定期的な会合で情報交換などを行う「会議体」を指す場合と、事務局を設置し当局と業界との間で調整役を担う「事業者団体」を指す場合がある。前述の再発防止策の書面上は、どちらとも読み取れた。
「既存」高速乗合バス事業者のほとんどが日本バス協会会員であるのに対し、高速ツアーバスの運行を請け負う中小事業者は非会員も少なくなかった。法令改正が行われた場合など、当局から事業者に連絡する際、前者であればバス協会を通して通知されるが、バス協会非会員事業者に確実に通知する方法がない、という課題も指摘されていた。
誰からというわけではないが、当時「楽天トラベル」の高速バス予約事業の責任者であった筆者のところに、同社が事務局を引き受け「事業者団体」的な組織を作ってはどうかという話が沸き上がった。意義深いことと思えた一方、既に存在する日本バス協会と対立する組織を作ると誤解されるリスクもあった。
(高速バスマーケティング研究所代表)