【体験型観光が日本を変える44】具体的な行動を起こす 藤澤安良


 北朝鮮は、ミサイルの発射に続き、核実験をも行った。その危機意識の覚めやらぬ今、防衛省は来年度予算の概算要求で史上最高の約5兆2500億円を計上した。結果は見守るとして、人を殺す道具とそれを防ぐ道具の競い合いがどんどんエスカレートする。「いたちごっこ」ならぬ、残念ながら軍事産業以外に生産性のない、「戦争準備ごっこ」になっている。

 日本では、少子高齢化に伴い、医療、福祉、教育も、地方創生や地域活性化も待ったなしの状況である。一方、東北震災の被災地では、住居も、公共施設も、道路も建設工事が進む中、復興はまだ半ばである。ハードの建設は終われば段落が付くが、施設や道路ができても、その利活用がなければ真の復興とは言えない。

 高規格道路の三陸北道路の建設が進み、多くの工事車両や商用車が通る中、完成区間ではすでに中心市街地を通過する車は、地元住民以外激減している。同時に、商店や自販機の購買までも減少するのは当然のことである。この後の極めて重要な政策が、観光振興と交流人口の拡大である。

 その岩手県、陸中の久慈市、普代村、田野畑村に伺った。中でも会談する機会があった首長や副首長はその理解が進んでおり、私が伺う要因でもあった。国内の観光客はもちろんのこと、増え続けている訪日外国人の誘客とその対応についての講演と、どのような対応とコミュニケーションをするのか、農家やその畑で実践研修を行った。

 交流人口の拡大とは、排ガスを残して通過する車をカウントするのではない。人と人が出会い、コミュニケーションが生まれ、互いが影響を受け、人間関係や信頼関係ができ、互いが高まることである。旅人や都市住民は心を高め(精神効果)、高まる価値にお金が支払われる。受け側の地域は、精神的影響(元気になる)と経済的影響(地域外貨獲得)を受ける仕組みでなくてはならない。

 新幹線や高速道路が開通しても、目的提案なしには観光振興にも、交流人口の拡大にもならない。その目的は、豊かな自然、田舎体験、民家ホームステイ、それらを通じた人情豊かな人々との交流。その地域を訪れる必然性を創り出すことに他ならない。

 当地は、大津波の被害の様子を後世に伝える大津波ガイドツアー、194メートルもの断崖がそびえ立つ三陸海岸を巡る当地独自の「サッパ船アドベンチャークルーズ」をはじめ、定置網、酪農、炭焼き、味覚など、豊富で魅力ある体験プログラムが旅の目的になる。

 旅人に分かりやすく、安全管理を徹底し、感動を与えられなくては、リピーターにも口コミセールスにもならず、継続しないことになる。つまりは、インストラクターやガイドなどの人材育成が不可欠となる。さらには、それらの目的提案を情報発信しなければ具体化しない。分かっていても、政策に掲げても、やらなければ何も起こらない。一番重要なことは、周到な準備の上に具体的な行動を起こすことである。その先に未来は拓けるはずである。

 
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