【体験型観光が日本を変える21】外国人に田舎体験を 藤澤安良


 昨日まで北寄りの寒風が吹き、駐輪場の自転車をなぎ倒したと思えば、一転して20度を超える暖かさ。体が追いつかない。そうして三寒四温が繰り返されて春が来る。桜の開花が近づいている予感を肌で感じることになる。日本は小さな国なのに四季がはっきりしている特別な国である。

 春を彩る桜を楽しみにしているのは日本人だけではない。3月末から4月上旬の年度替わりに、海外への航空機がとりにくくなっている。それは、日本人の海外旅行が増えているのではなく、訪日外国人が桜を見に来るためだと言うのだ。桜が咲かない常夏の東南アジア諸国からは特に多い。日本人が知っている桜の名所だけではなく、全国各地で美しいと思う桜のある風景はたくさんある。若葉の芽吹きの中で一際映える山桜、古刹名刹の古木、堤防の桜並木、穴場や秘境の桜を発信すれば、訪日外国人の誘致に期待が高まる。

 桜だけではなく、スイセン、梅、椿、菜の花、シャクナゲ、曼珠沙華、新緑や紅葉などその季節にしか見られない花に価値がある。四季の特徴がはっきりしている日本は観光拡大のチャンスが大きい。外国人への情報露出の機会が重要であり、ネットで拡散すれば今までの著名観光地でなくてもお客がやって来る。地方創生の可能性が広がる。

 外国人の訪日旅行の志向が、買い物から体験へと変化しているとの報道がある。体験プログラムへの期待と同時に、インストラクターやガイドとの交流も期待される。語学力はともかくインストラクターやガイドの質の向上が必要となる。人材育成が極めて重要ではあるが、なかなか進まない。地方の観光振興に人材育成は急務である。

 増える外国人への対応が迫られ、都市のホテルなどの客室不足から発生した空き部屋貸し、いわゆる「民泊」が話題である。それとは似て非なるものとして対極にあるのがホームステイ型の民家ステイである。それは簡易宿所の営業許可方式と行政による指針策定によって実施され、大きなトラブルは起こっていない。空き部屋貸しでは叶えられない、1次産業体験や共同調理で食を学び、日本の生活や文化を体験できると同時に、国際交流が可能となり、相互の理解が深まる。学校や研修旅行でそのニーズが高まりつつある。

 京都に近いこともあり、滋賀県の日野町ではすでに東南アジアや豪州など二十数カ国からの訪問があり、国内の教育旅行と合わせて5千人泊を超えている。奈良県飛鳥地方でも国内の修学旅行生が3千人泊を超え、訪日外国人も年間3千人泊に及ぼうとしている。過日は、その飛鳥にハワイの生徒たちが3泊の民家ステイをする企画で訪れた。

 棚田や花といった自然、古い町並みなどの景観、自然、アウトドアスポーツ、農林水産業、伝統工芸などの体験プログラム、民家ステイが、田舎の交流人口の拡大や地方創生の大きな原動力となる。新年度を控えて、市町村や広域連携で体験交流型の地域振興政策を推進してほしい。

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