【体験型観光が日本を変える12】北方領土の観光活用を 藤澤安良


 2016年は、リオデジャネイロ・オリンピックをはじめスポーツ選手の活躍が目立った。3年半後の東京オリンピックに期待がつながる年になった。熊本地震は甚大な被害をもたらした。その後も鳥取や東北などでも地震が起こっている。防災意識を高めて備えなければならない。

 沖縄で心配されていたオスプレイが不時着か墜落かいずれにしても大破した。経過や原因はともかく、沖縄の基地問題に対する不満を増幅することとなった。

 ロシアのプーチン大統領が来日した。期待が高まったのは北方領土返還の前進であったが、実効支配が続く中での戦後71年もの歳月が返還を難しくしているのであろう。今知り得る限りにおいて合意に至ったのは、具体的な内容は明らかではないが、特別制度を設けての共同経済活動であった。酉年の2017年は、日本で一番早く朝が明け、鶏の鳴き声が聞ける北方領土返還が夜明けを迎えてほしいものである。

 北方領土での経済交流はいくつもの項目が挙げられているが、目玉になるのは多額の投資を必要とせず、多くのウィン・ウインが期待できる観光である。低迷気味の道東観光の起爆剤になるはずである。なかでも国後島は標津町から24キロの距離で晴れればいつも見えている島で、大型望遠鏡で人が見える距離である。限られた枠で元島民の墓参団の訪問が行われてきただけである。激寒の地ゆえに人口は少なく、開発が進むと言っても舗装道路も少なく、日本の田舎の比ではない。以前、秋に択捉島に行った人は、川が鮭の遡上で真っ黒に波打っていたと言う。自然の豊かさは格別であり、豊かな漁場であり、風景と味覚については魅力いっぱいの観光地となる。

 さらにはヒロシマ、ナガサキ、オキナワに並んで、71年間も行けなかったゆえに平和学習の四大メッカになり、修学旅行の行き先としても脚光を浴びることになるのは間違いない。

 例えば、標津町の港から客船、高速船などで午前9時30分に出発し、国後の泊港に10時に到着し、貸し切りバスで島内観光を行い、15時30分に終了し、港で物産の購入時間を確保し、国後16時30分発で標津港に17時に到着する。往復同一の人物が往来する日帰りコースから始める。

 元島民は元島民身分登録証を持ち、提示で審査とし、観光客は、運転免許証などの身分を証明する書類審査で乗船許可が出るというシステムにすればよい。旅行費用は船代、貸し切りバス代、ガイド料、昼食代、お土産、ガイドブック、資料代などで構成し、1人当たり1万5千円から2万円で1日限定100人程度とし、年間数億円の売り上げが現地に落ちる。

 道東はその前後泊で潤い、羽田―根室中標津便の搭乗率は格段に上がり、機材の大型化や増便、あるいは羽田以外の空港からの路線拡大にもつながる可能性を持つ。この企画のリスクや問題はほとんどなく、両国が合意して最初に取り組める実現可能な経済活動である。17年は戦後71年間の夜明けを期待したい。

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