経団連・改定「観光立国推進基本計画」に対する意見

  • 2017年3月15日

 日本経済団体連合会(経団連)は2月14日、「改定『観光立国推進基本計画』に対する意見―地域主導の観光先進国の実現に向けて」をまとめた(既報)。本面ではその全文を紹介する。

I.はじめに

 観光は、生産波及効果46・7兆円、雇用誘発効果394万人を誇る基幹産業であるとともに、様々な産業の消費拡大を誘発する起爆剤となりうる総合産業である。観光振興によって地域の交流人口を増大させ、国内外の消費を地域に呼び込むことは、地域経済の活性化・震災復興の要であり、消費喚起の切り札である。加えて、草の根レベルでの交流と国際的な相互理解を促進し、友好的な国家間関係を構築することにもつながる。

 政府においても、観光産業が有する潜在力をいち早く認識し、「日本再興戦略」をはじめ成長戦略の重要な柱と位置づけて施策を展開してきた。また、2016年3月には、「明日の日本を支える観光ビジョン」(以下観光ビジョン)において、2020年、2030年を見据えた意欲的な目標・施策を公表した。「観光立国・観光先進国」の実現に向けて、政府一丸となり、総力を挙げて取り組む姿勢を明確に打ち出したことは、高く評価される。

 こうしたなか、本年度末には、2017~2020年度を主な対象期間とする「観光立国推進基本計画」(以下基本計画)が改定される。折しも本期間中には、イノベーションの急速な進展、人口構造の変化とともに、東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラ)の開催等が見込まれ、わが国観光産業を取り巻く環境は大きく変化すると予測される。ここに対応できるか否かが、観光の活況が一時的なブームとして終焉するのか、あるいは「観光立国・観光先進国」に向けて飛翔(TAKE OFF)するかの分水嶺と言えよう。

 経団連では、かねてより観光振興に向け、広義の観光産業の目線から政策提言(「高いレベルの観光立国実現に向けた提言」【2014年6月】等)の実現を働きかけるとともに、自らも人材育成や休暇改革に取り組んできた。今般、これまでの活動も踏まえ、次期計画において特に重点的に推進すべき施策を以下のとおり提言する。

Ⅱ.観光立国の実現に関する施策についての基本的な方針

基本計画は、わが国が目指す「観光立国・観光先進国」への道のりを示すグランドデザインである。その作成にあたっては、過年度計画の達成状況から政策効果を分析し、より効果的な施策へと昇華させるとともに、中長期的な経済・社会情勢の動向・方向性を見通したうえで、当面の5年間で取り組む施策を体系的に示さなければならない。

 なかでも、生産年齢人口の減少と高齢化の急速な進展は、観光需要と労働力双方の減少につながり、特に社会減も進む地方において深刻な影響をもたらすことが懸念される。一方、世界の観光需要は年4%増加するものの、高度な情報通信技術等を駆使した観光地間の誘客競争は、激化の一途を辿ると予想される。

 かかる課題を克服し、国内外の観光需要を取り込んで国・地域の成長につなげていくためには、旅行者数の拡大という「量」と同時に、高いレベルで観光の「質」を極めていく必要がある。その実現にあたり、基本計画を貫く理念・決意である「基本的な方針」では、以下の3つの視点を明確に掲げるべきである。

 1.「稼ぐ力」の発揮

 モノ消費から「コト消費」への転換といった価値観・ライフスタイルの変化、個人旅行の増加により、観光に対するニーズが急速に多様化するなか、消費を喚起するためには、官民挙げてマーケティングを強化するとともに、ニーズに則した質の高いサービスを的確に提供しなければならない。ラグビーワールドカップ2019、オリパラ、関西ワールドマスターズゲームズ2021等大型イベントが連続して開催される機会も十分に活用しながら、需要面で観光客一人あたりの消費額やリピート率の引き上げ、供給面で生産性の向上と提供サービスの高度化・高品質化等を通じて、需要と供給の好循環を実現し、観光の「稼ぐ力」を飛躍的に向上させる必要がある。

 また、観光は、自然災害・テロリズムの発生等の外部要因による影響を特に受けやすい産業であり、安定的成長の確保には、欧米豪・中東も含めた訪日外国人観光客の多様化、旅行先の分散・拡充等による需要の分散も重要である。

 2.先端技術の積極的導入

 観光分野においても、AI・ロボット、IoT等、超スマート社会「Society 5・0」における先端技術を積極的に活用する視点が不可欠である。これにより、観光産業が直面する深刻な労働力不足に対応すると同時に、さらなるイノベーションを創出し、他国観光地と競争していくことが可能となる。研究開発の推進と規制改革により、観光に関わる先端技術の普及を後押しすべきである。

 3.地域主導による自立的成長

 オリパラの効果を地方に波及させ、地域活性化と持続的成長を目指すうえで、鍵を握るのは地域の自立的な取り組みである。観光の主役たる地域において、その実情を知る担い手が一体となって、自らの選択に基づいて特色ある観光地を形成し、「稼ぐ力」を磨いていく必要がある。同時に地域の体制・事業環境の整備に資するよう、地方分権や財源移譲等を一層推進しなければならない。

 なお、基本計画の本旨は実行に他ならない。観光ビジョン、「観光ビジョン実現アクションプログラム」「日本再興戦略」「科学技術基本計画」等の施策が展開されるなか、相互に一貫性と整合性を確保したうえで、確実に推進することが不可欠である。

 そのためには、観光庁の人員・予算等を含めた体制を強化し、複数省庁にまたがる政策の一本化、計画の推進に必要な他省庁への働きかけ、進捗・達成状況のレビューとフォローアップの実行といった司令塔機能を一層発揮していく必要がある。これにより、本計画のPDCAを着実に遂行すべきである。

 こうした機能を発揮していくうえでは、わが国における観光産業の位置づけと将来像を十分に考慮しながら、名実ともに有効な施策を打ち出せるよう、将来的に省へと格上げすることも検討に値しよう。

Ⅲ.観光立国の実現に関する目標

基本計画の目標は、上記基本的な方針に沿った形で設定されるべきものである。また、掲げられた以上は、政府の責任とリーダーシップのもとで官民が緊密に連携し、計画期間中に確実に達成するのみならず、その後も維持されなければならない。

 目標の設定にあたっては、官民の関係者で十分に認識を共有したうえで、納得性・実行性のある高いものとするとともに、単年度ではなく計画期間の累計・平均、一人当たりの数値(消費額、旅行回数等)を重視する必要がある。また、観光の「稼ぐ力」を多様な側面から測ることができるよう、国・地域別、訪日目的別のセグメントごとの目標も重要である。さらに、新たな市場を創造していく観点からは、特に外国人の訪日旅行に対する潜在需要に関連する目標値の導入も検討すべきである。

 なお、PDCAサイクルを確実に実施し、前期基本計画の政策効果を検証する際には、自己評価に加え、委託調査等も活用することが望ましい。特に未達項目については、検証結果に基づき、より政策効果の高い施策が付加されることで、基本計画のさらなるブラッシュアップが期待できよう。

Ⅳ.観光立国の実現に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

(【 】内は現行基本計画内の項目)

 1. 観光関連産業の成長力強化

(1)消費の喚起・創造

 一人当たり消費額・リピート率の引き上げと新たな消費市場の創造を実現するには、提供サービスを高度化・高品質化する供給側の努力に加え、政策による環境整備が重要である。あらゆる機会・場を「消費を促す場」として位置づけるとともに、消費の妨げとなる障害を取り除き、消費意欲の向上を図るため、以下を推進すべきである。

 (1)情報プラットフォームの整備【2―2関連】

 現在、各地域・企業が独自に国内外の観光客が有する潜在・顕在ニーズの調査・分析等に取り組んでいるが、共通の情報プラットフォームを国が構築し、関係者が共同で利用できるようにすれば、コストの低減とともに、より効果的なマーケティング戦略の立案・実施が期待できる。なかでも、各国および国内各地における「コト消費」や、富裕層・高齢者層等の潜在需要に関するデータは、コンテンツの充実やプロモーションの企画に有用である。また、観光客の移動や消費行動を詳細・具体的に把握することができれば、観光ルートの整備に活かすことができる。

 なお、地方自治体向けのデータ提供では、すでに「地域経済分析システム(RESAS)」が稼働しており、利用者の利便性向上の観点から、将来的に一つのシステムに統合させることが望ましい。

(2)「消費を促す場」の形成【新規】

 観光の玄関口となる空港・ 港湾は、お土産の購入等を含む重要な観光消費の拠点であり、近郊からの消費と交流も呼び込むことで、「消費を促す場」として活性化する余地が十分にある。施設内の導線や立ち入り制限エリアを見直し、商業施設を拡充するなど、整備に努めるべきである。

 また、国・地域を挙げた大型イベントについて、ショッピング・ツーリズムの拡大に資するよう、その集中開催時期に合わせて訪日外国人旅行(インバウンド)も含む観光客誘致を強化することも有効である。

 (3)免税制度の簡素化・電子化【新規】

 訪日外国人旅行者および海外在住の日本人に対して、消費する際の心理的障害を取り除き、ストレスなく買い物できる環境を整えるうえで、免税制度の改善は有効な手段となる。現在は、販売者・消費者双方にとって一般物品・消耗品の区分の判断が困難なうえに、パスポートに手動で押印を得るなど所定の免税手続きが必要であり、待ち時間が増加するケースも見られる。消費者の利便性向上の観点から、手続きを早期に電子化するとともに、一般物品・消耗品の区分を撤廃し、上限額を引き上げるべきである。

 (4)新たな市場の創造【3―5(二)、(三)、(五)関連】

 高齢者、障がい者、乳幼児連れ家族をはじめ、国内外の潜在ニーズに対応し、誰もが快適に観光を楽しむことができるよう、バリアフリー化、多言語対応を含め、インフラ、サービス等のユニバーサルデザイン化を急ぐべきである。また、若い時期からの旅行は、将来的な旅行の継続につながるとの指摘もあることから、国際的な観光交流を拡大する観点からも、学生・20歳未満を対象にパスポート取得費用を低減する等、若年層の旅行促進策を打つことも重要である。

 加えて、わが国が有する伝統文化や先端技術は、それ自体が重要な観光の資源であり、海外富裕層・ビジネス層等の新たなターゲットも見据え、より付加価値の高いツーリズムの形成に活用する視点が求められる。カルチャーツーリズム、アグリツーリズム、テクニカルビジット等の拠点およびルートの形成を支援するとともに、国を挙げて情報発信に努めるべきである。

 特に、和食への関心が世界的に高まるなか、アグリツーリズム等を通じて観光客がわが国食文化に触れる機会を積極的に提供することで、お土産の配布・SNS等の情報発信による誘客を促進するのみならず、輸出を含む国産農林水産物の消費を拡大させることが重要である。観光庁と農林水産省は緊密に連携し、農家民泊や和食調理・農業等の体験利用を後押しするとともに、個人手荷物(お土産)の検疫簡素化等、農林水産物の輸出体制の強化を図るべきである。

(5)休暇の分散化【2―4、3―5(一)関連】

 観光産業では、年間旅行量の約4割がゴールデンウイーク、お盆、年末年始等のピーク期間に集中していることから、労働平準化や設備投資を阻害し、生産性を押し下げている側面がある。加えて、同期間の混雑や価格の高騰は、観光需要および観光客の満足度の低減圧力となっている。

 かかる課題を解決するには、構造改革によって閑散期への分散と需要の平準化を実現することが欠かせない。特に、地域における交流人口の拡大と家族旅行の振興を図る観点からは、学校の休業日を地域ごとに分散化し、子供の休みに合わせた年次有給休暇の取得を促進することが有効となる。政府においては、2016年4月に各地教育委員会に対して学校休業日の柔軟な設定を検討するよう通知を発出しているが、実施状況のフォローアップを行い、結果を公表すべきである。

 併せて、地域ごとの気候や伝統行事等に合わせた、独自の休暇設定を奨励すべきである。

 (2)技術開発・普及促進【新規】

 提供サービスの高度化・高品質化や生産性の向上を図るうえで、先端技術の導入は不可欠である。例えば、完全自動運転車(レベル4)の普及は、多言語対応が可能な二次交通や荷物配送サービスの維持・充実のみならず、高齢者・障がい者等を含め、あらゆる観光客の観光地へのアクセス改善をもたらすこととなり、これまで主要な交通インフラからの距離が障害となっていた観光地においても、集客を図る絶好の好機となる。また、宿泊・飲食はじめ各施設で接客・サービス提供が可能なロボット・AI、低コストの多言語翻訳ツール、施設説明を代替するVR等は、効率化や労働力不足への対応のみならず、観光資源の魅力発信にも欠かせない。

 経団連では、「Society 5・0」の実現に向けて、2500億円の政府研究開発投資を求めてきたところであり、観光に関わる技術開発も積極的に推し進めるとともに、安全性の確保を前提としつつ、設備投資支援や税制優遇措置等を活用して、観光の現場への早期実用化と普及を後押しすべきである。その際、将来的な先端技術の導入も視野に、既存の法制度を見直すことが重要である。

 (3)規制改革【3―2(一)、(二)、3―5(二)関連】

 多様なニーズに対応し、地域の特色ある観光地を形成するには、既存の枠に捕われない新たなサービス提供を可能とする環境整備が必要である。

 農村や古民家等における民泊は、重要な観光資源であるのみならず、宿泊施設の需給が逼迫している地域における代替手段となりうる。提供者・利用者双方が納得しうるルールを設け、その遵守を徹底すべきである。将来的には、旅館業法への一本化も考慮するとともに、現行の旅館業法等についても、先端技術の導入等も見据え、フロント(玄関帳場)の設置義務、ロビーの面積制限等の規制を緩和・撤廃する必要がある。

 また、国立公園の観光地化には、民間が地域との連携のもとで運営に参加し、多様な活用方法を提案・実現できるよう、用途規制・区域制限の解除の認可と同手続きの簡素化、官民連携を促す幅広い事業スキームの認可等の制度整備が求められる。

 公共施設・道路についても、安全確保と景観との調和を前提として、新たな技術やコンテンツ導入への柔軟な対応が必要となる。例えば、通行人に対応した言語・内容表示や、スマートフォンとの連携が可能なデジタルサイネージの設置、ユニークベニューの一層の展開に向けて、道路交通法はじめ関連法制を見直すべきである。

 (4)人材の育成・確保【2―1、3―3(二)関連】

 観光産業は、対面サービスの多い労働集約型産業であり、労働人口減少の影響は深刻である。客室清掃、受付、給仕等のホテルワークやツアーコンダクター等、いわゆる基幹的な人材から、観光政策と観光地経営を担う高度観光人材に至るまで、その育成・確保は喫緊の課題となっている。

 基幹的な人材については、多言語対応の必要性の高まりも見据え、社会動向を十分に踏まえながら、必要とされる専門職に就労可能な在留資格(技能)を適用すべきである。例えば、外国人観光客の和食人気に応えうる調理師に門戸を開くとともに、その他高度な熟練を要する作業に従事する人材については、在留資格「企業内転勤」を柔軟に運用することも一案である。また、特定の地域イベントの開催時に、兼業ビジネスを支援することも検討に値する。

 高度観光人材として、DMO等で地域マネジメントを担う人材については、国・自治体が地域大学における育成を積極的に後押しするとともに、学生の関心度を引き上げ、観光関連産業への就業を促すため、官民連携で高度観光人材のキャリアパスの発信に努めるべきである。

 国の観光政策立案・執行を担う人材については、観光をわが国の基幹産業に押し上げていくという覚悟のもと、政府一丸となり、異動間隔の長期化や各地観光推進機構への出向等を活用した育成に取り組まなければならない。

2.受入体制の整備


(1)交通インフラ


(1)空港・港湾【3―2(三)関連】

 観光客数の急増に伴う受入キャパシティの拡充は最重要課題であり、特に島国であるわが国にとって、空港と港湾の整備はインバウンド誘客の生命線である。クルーズ観光の世界的な需要拡大に伴い、わが国への大型クルーズ船の寄港回数も急増しており、港湾整備の重要性も一層増している。

 空港・港湾ともに、キャパシティの不足を避けつつ、将来的な有効活用も見据えたうえで、地域ごとの戦略に従って優先的に整備すべきインフラを見極め、効果的な投資を迅速かつ低コストで行うことが重要である。同時に、離発着制限等の諸規制の更なる緩和、近郊空港・港湾との役割分担と連携強化により、オペレーションの効率化に最大限努めなければならない。

 また、CIQは、海外からの旅行者が最初に接する日本の窓口であり、より快適な環境の整備が不可欠である。自動化ゲートの普及および事前登録制度の見直し、入国審査官の質的向上、審査ブースの機動的な運用を加速すべきである。

 (2)二次交通【3―2(三)関連】

 観光客数の増加を各地域での実際の消費へと結びつけるためには、二次交通を整備して、玄関口となる主要駅・空港・港湾等から、観光資源・ショッピングエリアといった「消費を促す場」へのアクセスを改善・充実することが欠かせない。

 東京においては、オリパラも見据え、羽田空港から東京中心部へのアクセス強化を急ぐべきである。また、クルーズ船が寄港する港湾においては、中心街への道路整備に加え、バス等の交通手段や駐車場を十分に確保することが重要となる。二次交通が縮小傾向にある観光地については、自動運転の導入やピーク期間の限定運行等も視野に、交通手段の維持に資する施策を検討すべきである。

 (2)大規模MICE施設【2―3、3―4(一)関連】

 世界から各方面のトップリーダーが集まる大規模MICEは、イノベーション・ビジネスチャンスを創出するのみならず、わが国の魅力を参加者に体感し、発信してもらうことで、ブランド力を強化する絶好の機会である。国際会議の規模拡大に伴い、世界では10万人規模のMICE誘致をめぐる熾烈な競争が繰り広げられており、わが国においても競争力を保つべく、フラッグシップ型大規模MICE施設の整備が課題となっている。

 MICE参加者の利便性・満足度を高め、施設運営費を確保するためには、会議施設とともに、周辺の宿泊施設、ショッピングエリア、エンターテイメント施設等を一体的に整備し、一定の質を担保する必要がある。なお、カジノ施設の運営等に係る法制度整備にあたっては、国民への影響を鑑み、経済性と倫理性双方の観点から、国民的な議論を十分に深めることが大前提となる。

(3)安全・安心の確保【3―5(四)関連】

 十分な危機対応体制を整備し、観光客および住民の安全・安心を確保することは、国内外の観光客がストレスフリーに観光を楽しむためだけでなく、観光地を持続的に維持・発展させるうえでも不可欠な基盤である。

 観光地の主要駅・観光資源付近でのWi―Fi整備を一層加速し、多言語かつリアルタイムでの災害情報発信を強化するとともに、外国人対応を想定した防災訓練に注力すべきである。また、登山、自転車、ダイビング等のアクティビティを楽しむ外国人観光客の増加に伴い、事故等に備えた保険加入の徹底や、安全に関わる標識等の多言語化も強化する必要がある。

 3.地域主導による自立的成長

 (1)日本版DMOの形成支援【新規】

 観光を基盤産業とする地域において、将来に渡り自立的な成長を実現するには、観光資源をフルに活用して、戦略的かつ持続的に交流と消費を呼び込み、「稼ぐ力」を磨く努力が不可欠である。

 そのためには、地域の将来的な方向性と観光戦略を決定し、効果的に施策を実行する司令塔機能が欠かせない。すでに日本版DMOの形成が進められているが、より一歩進めて、地域の幅広い関係者が参画し、その合意に基づいた観光戦略を策定・実行しうる、良質なモデル的DMOの設立を集中的に支援すべきである。後押しにあたっては、全国一律ではなく、広域・官民連携や持続的な観光地形成に意欲的な地域を対象とすることを基本とすべきである。

 (2)財源の確保【新規】

 地域の持続的な観光地経営が可能となるよう、自治体における宿泊税等の設定、国の財源移譲等により、必要な財源を確保すべきである。DMOにおいても、観光資源への入場料、旅行商品や地場産品の販売、ファンドの運営等をはじめ、地域の判断に基づき、自ら稼ぐ仕組みを構築することが望ましい。

 また、地域活性化策の主要な財源である国の予算は、実際に執行されるタイミングが年度の後半にかかり、地域におけるタイムリーな施策展開を阻害する要因となっている。立案から執行に至るプロセスを大胆に迅速化するとともに、地方創生に関わる一部予算については、複数年度に跨る執行も可能とすべきである。

 (3)東北等被災地における観光の振興【新規】

 東日本大震災から5年が経過したが、観光客については、震災前の水準を回復したに過ぎず、この間の全国の伸び率には未だ及ばない。風評被害等の影響も強く残るなか、東北観光地の再生・振興に向けた施策を継続する必要がある。例えば、今も爪痕が残る沿岸等の地域は、震災の記憶風化防止に貢献する高い教育効果も有しており、地域の戦略に基づき、東北にしかない教育観光資源として整備することも一案である。

 大規模な震災等に被災した地域についても同様に、一定期間、観光地の再生を国として支援することが望ましい。

Ⅴ.おわりに――経団連の取り組み

観光振興と地域の活性化は、わが国の産業に遍く関わる重要課題であり、官民の総力を挙げた不断の努力が欠かせない。

 経団連ではかねてより、観光インターンシップの実施や休暇取得の促進・分散化、民間外交等を通じて、観光の質的向上に努めてきた。今後、特に以下の取り組みを強化し、「観光立国・観光先進国」の実現を確実なものとしていく。

 1.消費の喚起・創造

 ワーク・ライフ・バランスの促進に加えて、企業人および家族による平日の観光を振興するため、学校休業日と合わせた有休取得促進の呼びかけ、秋の働き方改革キャンペーン「年休3!4!5!」等のフォローアップ調査を行う。同時に、学校休業日の柔軟な運用等を進める自治体・教育機関、経済団体との意見交換等を通じて連携を深めるとともに、より一層「働き方・休み方改革」を進め、休暇取得や家族旅行をしやすい環境を整備していく。

 また、テクニカルビジットの振興に向けて、会員企業に対し、産業観光の検討や取り組みを働きかける。高い知名度を誇る企業の本社や工場は貴重な観光資源であり、本業の円滑な実施を前提に、地域の観光地形成の取り組みに参画することも考えられることから、事例の調査と横展開を図っていく。

 さらに、2月24日に予定されているプレミアム・フライデーを皮切りに、「消費を促す場」となりうるイベントを展開する。

 2.高度観光人材の育成

 経団連では、高度観光人材の育成を目指して、幅広い業種の企業の参画のもと、2011年度より立教大学、2014年度より首都大学東京と協働で「経団連観光インターンシップ」を実施している。学生の企画立案能力の開発や観光現場・裾野産業への理解を促すプログラム形成に取り組んでおり、内容の質的向上を図るとともに、地方の大学への展開を進める。

 3.地域の先進的な活動事例の収集・発信

 経団連では、地方経済懇談会、地方視察等をはじめ、定期的および非定期の地方経済団体との交流機会を有しており、こうした機会を最大限活用して、各地の観光地経営に係る成功事例を収集し、情報発信に努める。

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