リクルートワークス研究所、旅館に「働き方改革」提言

  • 2017年8月9日

 人手不足に対応し、働き方改革で生産性を高める―。リクルートホールディングス(東京都千代田区)の人と組織に関する研究機関、リクルートワークス研究所はこのほど、旅館を中心とする宿泊業の働き方改革に関する研究の成果を発表した。宿泊業が今後さらに深刻な人手不足に陥る可能性を指摘した上で、持続的な経営を実現するための働き方改革として「10のキーワード」を提言した。

 宿泊業に働き方改革がせまられている理由の一つが人手不足の深刻化。総務省の2012年度就業構造基本調査によると、宿泊業の就業者の28・6%が60歳以上で、全産業の19・7%と比較して割合が高い。旅館業に限るとさらに高いとみられ、同研究所では「今後、数年程度で大幅な人材不足に陥る可能性がある」と推測する。

 また、特に旅館は労働集約産業で家業的な形態も多く、旧態依然とした業務の進め方が残り、改革の余地が大きいと指摘。例えば、ITは集客面には活用されているが、業務効率化への活用が遅れている。中小企業庁の13年度中小企業白書によると、業務のスピードアップのためのITの導入状況は、建設業の45・3%、卸売・小売業の40・5%などに対し、宿泊・飲食サービス業は22・7%にとどまる。

 宿泊業の持続的な経営には、限られた人員で顧客に高い価値を提供する効率的なオペレーションが必要と提言。この実現への取り組みを働き方改革として「10のキーワード」で示した。キーワードは(1)タスク再構築(2)IT・テクノロジーの活用(3)安定稼働(4)サービスの価格反映(5)情報公開による誘客プロモーション(6)賃金の引き上げ(7)労働時間の圧縮(8)人材ポートフォリオの構築(9)プロ人材の育成(10)企業間・地域間のネットワーク化。

 「タスク再構築」では、従業員の業務を細かく分け、付加価値を生む業務などを見極め、役割分担の見直しやマルチタスク化を推進。業務を「捨てる」(廃止)、「無人化する」(IT化など)、「プロ化・マルチ化する」(スキルアップやマルチスキル化による労働時間の短縮、高密度化)などに分類して再編する。

 「IT・テクノロジーの活用」では、顧客接点から離れた付加価値の低い業務などをIT化し、無駄を排除して接客時間を増やす。他方で顧客情報の蓄積にも生かす。研究対象の旅館の一つ、三重県・賢島温泉の汀渚ばさら邸(18室)では、ITを活用したデータベースで顧客情報を徹底管理。顧客の飲食の好みなどを接客スタッフが細かく記録し、「サービスの価格反映」につなげている。

 「安定稼働」では、人材を最大限に活用するため、労働時間における人材の稼働状況を高水準で安定化させることを目指す。事例の一つが、定休日の設定による営業時間の圧縮、限られた営業時間内の安定的な高稼働。研究対象の旅館、神奈川県・鶴巻温泉の元湯陣屋(20室)は、週3日の休館日の設定に伴い、パート、アルバイトへの依存が減り、高いスキルを持つ従業員が常に顧客に対応するようになったことで、人件費が減少、客単価が向上し、給与や休暇の改善が実現した。

 このほか「賃金の引き上げ」に関しては、同研究所の全国就業実態パネル調査2016によると、「自分の働きに正当な評価を得ていない」と回答した人の割合が、サービス業全体で23・5%なのに対して宿泊業接客では32・3%と高い。評価基準、賃金アップの仕組みの「見える化」などで働きがいを引き出す。

 宿泊業の働き方改革について、研究プロジェクトのリーダーを務めた同研究所の研究員、城倉亮氏は「人手不足は避けることができない課題だが、働き方改革を進めることで対応は可能。生産性が高く、スタッフが生き生きと働く職場をつくることができる。客室の稼働率を高めるという発想から、人材の稼働率を高めるという発想に切り替える必要がある」と話している。  

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