【道標 経営のヒント92】旅館を科学して生産性向上 佐々山茂


 「見える化モニター」の前で朝礼を行って気づいたこと。「夜の1時になんでガスの使用量が増えているのか」。深夜の食器洗浄作業が原因であり、今まで経営者が把握できていなかった深夜労働が見える化できたのだ。

 昨年5月から国際観光施設協会のエコ・小委員会で観光庁や宿泊業の生産性向上推進事業に取り組んでいる。この事業は昨年、安倍晋三首相の肝いりで日本旅館協会が旅館ホテル生産性向上協議会を発足させて始まった。

 宿泊業には長時間労働の問題がある。生産性を上げて待遇を改善し、優秀な人材を宿泊業に迎え、利益を上げて設備投資を続けることで地位向上と合わせて、インバウンドを含めた観光施策、国策に貢献することが目標となっている。

 青森のモデル旅館では「エコ・小」の切り札として水光熱費の「見える化」の実証実験を行った。水光熱費と宿泊人員の関係を把握し、理解して経営している旅館はほとんどない。まして水道、給湯、油、ガスの見える化は進んでいない。

 今回は水道、給湯、電気、ガスはボイラーと厨房に分けて計測器を設置し、加えて外気温度、源泉温度、各浴槽温度も館内Wi―Fiでパルス信号を監視装置に送り、見える化モニターにグラフで表示した。また、1日中回っていた浴槽循環ろ過ポンプにインバーターを設置してお客の少ない時間帯は回転数を下げて電気使用量を削減した。

 社員の皆さんが通るサービスエレベーターホールに設置した大型モニターに時々刻々に推移する使用量を宿泊人員と共に表示し、モニターを見てそれぞれの職場で働く人が自分の作業で使うエネルギーの量を知り、無駄を見つけ、カイゼンを図る動きが始っている。

 この情報は東京の管理会社にインターネットを通してリアルタイムに送られる。見える化システムは、付ければおしまいでなく始まり。一連の対策で年間300万円を超える削減効果が計算できる。

 設計の仕事で旅館に伺うとどこでも人手不足が大きな問題になっている。一生懸命に仕事をしている優秀な若手の期待に応えるには、勘による経営から数字で見える化した経営に変化する必要がある。社員が頑張って無駄を見つけ削減した時に、その削減の量を数字で見える化するとやる気が出るもの。

 観光庁ホームページの動画配信の「ホテル旅館“カイゼン”で人手不足解消!Case7水光熱費の削減」に詳しく出ている。最近話題のIoTの活用事例である「旅館の見える化」を国際観光施設協会で進めているところだ。

 
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