【観光業界人インタビュー】JTB協定旅館ホテル連盟 大西雅之会長

  • 2017年10月3日

新会長としてのかじ取り

さまざまな変化に対応し、JTBとWIN&WIN

  ――6月12日の通常総会で新会長に選任された。

 「JTB協定旅館ホテル連盟は、日本交通公社協定旅館連盟として1955年に創設されてから62年の歴史を重ねている。先日、公旅連ニュースの創刊号を読む機会があった。冒頭、初代の小林毅会長、日本交通公社(現JTB)の西尾壽男社長が公旅連にかける熱い思いを語っている。コミュニケーションを深め、一緒になってお客さまに質の高い旅行を提供する。そして旅行文化向上のためにお互いに力を合わせて活動していこうと決意が述べられている。実は私も今年62歳になったが、観光の黎明期に先達が高い志を持ってスタートした組織の第9代目の会長に指名され、その歴史と責任の重さを痛感すると共に、使命感とやりがいを強く感じている」

  ――会長としての方針をうかがいたい。

 「今、インターネットとインバウンドが観光業界を根底から変えており、高齢化や人口減も進んでいる。マーケットの変化は待ったなしだ。これからの中心になるミレニアル世代や外国人旅行者の感覚はこれまでとは大きく違う。それぞれの変化にしっかりと対応していかなければならない。例えば、世界標準で考えれば、ルームチャージ制や滞在型に向けた泊食分離の取り組みが必要になる。それに沿ってJTBと旅ホ連会員の取引の仕組みも変わらなければいけない。WIN&WINにつなげられるシステムをどう作っていくかが、今一番大きなテーマだ」

  ――宿泊業界を取り巻く環境をどうとらえている。

 「大きく四つの課題がある。一つは、失われた20年の間にお客さまのニーズと宿泊業界のあり方に大きなギャップが生じていることだ。宿泊施設だけではなく、観光地のあり方にもミスマッチが生まれている。設備投資が難しかった中で、施設の老朽化や観光地の疲弊が目立っている」

 「二つ目は、労働生産性の低さ。人手不足、人材不足の大本は労働生産性の低さにある。労働生産性が低いので賃金も低く、長時間労働になる。従業員が誇りを持って働ける環境を作らなければ事業継続も難しい時代になった。旅館の労働生産性は欧米のホテルの3分の1と言われる。第一に、我々経営者が変わること、近代経営に向けた意識改革が不可欠だ」

 「三つ目は、民泊問題も含めて異業種からの参入と業態の多様化への対応だ。我々業界の競争力が問われてくる」

 「四つ目は、急速なマーケットの変化と国際化にどう対応していくか。JTBもそのために来年4月に向け大きな改革を決断したわけだが、これは旅ホ連も共通の課題であり、強固なチームワークのもとで迅速に変革していかなくてはならない」

  ――JTB旅ホ連の在り方をどう考える。

 「JTBには観光業界の盟主として、観光業界全体の発展と地位の向上に貢献するという理念がある。そのJTBと連携して取り組んでいくのが、旅ホ連の存在意義だ」

 「OTAは、手数料の値上げも契約条件の変更も一方的な通告だ。協議もなく活用継続の有無を問われる。それとは対極で、JTBと旅ホ連との間には相互理解とコミュニケーションの場があるのは本当に素晴らしいことだ」

  ――今年度の重点事業を教えてほしい。

 「経済団体として最も大切な事業が宿泊増売だ。昨年度は達成できなかった4500億円に再チャレンジするJTBに全面的に協力する。WEB販売の強化も、進んで協力する。個性ある観光地があってこそ会員施設が繁栄できるという考えに基づいて、地域振興・観光振興にも取り組んでいく。昨年度までの『魅力ある地域づくり』から今年度は『個性ある地域づくり』がテーマだ。経営には人材が全てであり、人材育成にもしっかり取り組む。今年新設した『人財・組織強化委員会』を中心に、人材育成と、JTBの現場中核の担当者との交流を通じ組織を強化していく」

  ――民泊についてどう考えるか。

 「既存宿泊業者は、いろいろな規制の中でコストのかかった施設を造り、運営してきた。他方、遊休不動産だからといって大きなコストもかけず施設を運営できる。この違いを残したまま競争に入ると、旅館・ホテルはどんどん質が劣化し、体力を失っていく。結果的に日本の観光にとっては大きなダメージになる」

 「違法な民泊をしっかりと取り締まってほしい。営業日数は守られているか、住民たちとトラブルが起きないか、安全性は担保できるのか、そういうところをしっかりと監視できる仕組みを作ることが不可欠だ」

  ――民泊予約サイトと業務提携し、JTBが訪日旅行者向けサイトで民泊の取り扱いを始めた。

 「旅ホ連はJTBから相談を受け、企画委員会などで議論した。合法化された以上、農家民泊に代表されるような正しい民泊を受け入れ、単に過当競争を生み出す民泊や安全を阻害する民泊がはびこらないよう、JTBには観光業界のリーダーとしてイニシアチブを取ってもらいたい」

 【板津昌義】

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