【観光業界人インタビュー】環境省温泉地保護利用推進室 山本麻衣室長

  • 2017年7月18日

山本室長

温泉地活性化の取り組み

新・湯治推進プラン提案へ 地熱対応にはデータ収集を

  ――前職は? また、温泉地保護利用推進室は知っていましたか。

 「長崎県に出向し、自然環境課長として1年9カ月ほど務めました。異動の話は正直びっくりしましたね。推進室ができたのは聞いていましたが、どんな仕事をしているのか、内容は詳しく知りませんでしたから。今年4月に就任しましたが、前任の室長からは『できて間もない組織で、きちんと固まったものはないが、むしろ自由な発想で仕事ができる』といわれました。そろそろ方針を整理したいと思っていますが」

  ――推進室は15年12月にできました。

 「温泉という切り口で施策を立案し、実行するのは環境省だけです。推進室はその実行部隊であり、どういった方向性を示すのか、温泉に関わる人々や地域の期待も大きいと思います。予算が少なく、資金援助を求める声に応えられないのが悩みの種ですが、そこは知恵でカバーし、皆さんのためになる温泉行政を進めていきたい」

  ――温泉だけで客を呼ぶというのも難しいですね。

 「温泉地は全国に3千カ所以上もありますからね。ちょっと足を延ばせば全国どこでも温泉はあり、観光コンテンツとしてはそう特別なものではないような気がします。周辺環境を含めた楽しみ方、プログラムを示すべきです。多くの温泉地では、温泉それのみでは厳しいと思います」

  ――先頃、「自然等の地域資源を活かした温泉地の活性化に関する有識者会議」を立ち上げました。

 「その名の通り、温泉地の活性化策を探る会議で、6月29日に第2回会合を開きました。提言の骨子案を議論し、7月20日の会合で提言が出される予定です。案の段階ですが、現代のライフスタイルに合った温泉の楽しみ方を『新・湯治』と位置付け、新・湯治を提供する場としての新しい温泉地のあり方、省や関係機関に求めることを『新・湯治推進プラン』として提案しようという方向になりそうです。温泉地は普通の観光地とは違う場所、療養の場でもあるということを改めて印象付け、周辺の食や歴史・文化、アクティビティなどさまざまな要素を組み合わせることで価値を高めようというものです。提言は今後の施策に反映させます」

  ――5月に全国温泉地サミット(全国温泉地自治体首長会議)を開きましたが、成果は。

 「今回は92自治体の首長らが集まり、傍聴を合わせると約230人の参加がありました。全国の温泉地の首長らに集まっていただき、私どもとつながりを持ち、温泉地を活性化させようという意識を共有してもらうのが狙いで、その意味では一定の成果が出ていると思います。来年5月の第3回サミット(大分県別府市)では、有識者会議の提言を受け、省が何をするかを示し、協力を得たいと考えています」

  ――第3回は「世界温泉地サミット」(大分県主催)に合わせての開催となるようですね。

 「初めての世界サミットであり、私どもも期待しています。日本全体で温泉を考えるきっかけになればいい。協力できることがあれば惜しみません」

  ――民間との連携も積極的に進めています。昨年5月、上田市や日本理学療法士協会と協定を結びましたが、第2弾、3弾は。

 「現段階ではないが、可能性はあります。こちらからも自治体などに働きかけていきたい」

  ――地熱開発と温泉保護については。

 「温泉資源は日本にとって大事なものであり、生業としている方々もいます。それは尊重されるべきで、温泉資源の保護を図りながら地熱を推進していくのがベストです。温泉地は地熱開発を議論していく前提として、自分たちの温泉が今どういう状況にあるのかをきちんと把握しておくのが大事です。それは浴用としての温泉を守るためにも不可欠ですから。議論がしっかりできるデータを集める努力をしてほしい」

  ――温泉は好きですか。

 「温泉を目的に旅をするほどではありませんが、推進室に来て温泉の奥深さを知りました(笑い)。印象深い温泉地は長野の白骨や乗鞍ですね。最初の赴任地だったので。もちろん、前任地の長崎の温泉も好きな場所です」

【やまもと・まい】東大農卒。1995年環境庁(当時)入庁。野生生物課課長補佐、自然環境計画課課長補佐、長崎県自然環境課長などを経て、2017年4月から現職。山口県出身、44歳。

【内井高弘】

 

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