【私の視点 観光羅針盤97】地域の人材に光をあてる 清水慎一


 1948年生まれの筆者は「団塊世代」ど真ん中だ。同学年は260万人を超え、いつもすし詰めの学校で受験地獄を過ごした。その反動で、反体制派の牙城となった大学では紛争により半年以上授業がなく、ユースホステルを渡り歩くカニ族と化した。

 そんなわれわれも70歳になる。「後にはぺんぺん草も生えない」と揶揄された世代の筆者にとって、関心事は晩節をどう全うするかだ。ポストなどにしがみつき、昔の肩書で生きることだけはしたくない。そんな思いから、地域づくりのお手伝いをしている。

 地域づくりと言っても、地域を元気にしようと立ち上がった同志を盛り立てる役だ。メンターという言葉がふさわしいかもしれないが、単なる助言者ではなく、時には昔の経験や肩書を生かして、彼らに立ちはだかるしがらみなどに、同志として対峙する。

 地域には、観光による地域課題の解決(「観光地域づくり」という)に率先して取り組んでいる志の高い人はたくさんいる。その中から、人材を見出し、盛り立てていくと共に同志として一緒に活動する。

 筆者にとって人材とは、オールマイティーなカリスマではなく、さまざまな能力やスキル、ノウハウを持った仲間を結集させながらチームとして地域課題の解決に取り組むことができる人望厚い人たちだ。

 何しろ、地域づくりは年々変数が増える一方で、一人の力では如何ともし難いからだ。

 そういう同志の中に、雪国観光圏の井口智裕さん、八ヶ岳観光圏の小林昭治さん、にし阿波観光圏の植田佳宏さんなどがいる。皆、地域に根差して多様な人たちと志高く観光地域づくりに取り組んでいる。地域に根差さない筆者の役回りは、彼らを盛り立て、悩みを共有し、時にはしがらみなどに立ち向かうことだ。

 同志の輪をもっと広げようと、5年前にはふるさと長野県の阿部守一知事と相談して、塾を始めた。「信州・観光地域づくりマネージメント塾」だ。2年間に20回、私と副塾長の高砂樹史君(元小値賀観光まちづくり公社)が、毎回塾生から志や地域課題を聞き、一緒になって解決策を模索している。

 3月22日に行われた第3期生の前半の終了式では、塾生が発表する観光地域づくりの志と課題、解決策を、知事に直接聞いてもらった。知事にもわれわれ同志の輪に入ってもらうためだ。

 行政や専門家は、人材育成が重要だと、いつも声高に叫んでいる。そういうのに限って、「地域には人材がいない。」と嘆く。そうではなくて、地域には人材はたくさんいる。問題は、光が当たっていないだけだ。

 人生を謳歌しつくした「団塊世代」は、「今こそ地域人材を盛り立てる役回りに徹すべきだ」と肝に銘じながら、全国各地を巡っている。

(大正大学地域構想研究所教授)

 
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