【シニアマイスター経営の知恵32】「現場力の理解を」桐木元司


 経営者や管理者に「現場の状況はどうですか」と尋ねると、多くは「現場のことは分かっている」という。しかし、その人たちが考える現場とは、「現場の報告は会議で聞いている」「たまに現場へ行き状況は知っている」という答が少なくない。

 「現場」とはお客さまにサービスや商品を提供する際、最適な価値を創造する場と機会であることを、改めて認識したい。

 ピープルビジネスの典型業種である宿泊業にあって、「現場を知っている」というのは「働くスタッフの喜びや悩みも分かる」ことも含む。その意味から、情報化・システム化の進展が加速するなかで、主役としての「人」へ、さらなるスポットを当てる必要が出てきた。

 情報化は誰でも、平等にデータが手に入る社会を作り出したことで、データだけで競争優位に立つことは難しくなった。それにより、もう一つの「情」、つまり情感を加えた「情報と情感の仕事」を目指す必要があろう。「現場力」とは現場の人材が保有する能力と意識を高め、自律的に変化・変革する力である。

 それは、現場で働く「人々」の強さでもある。強い現場力を備えた会社に共通することは、仕事の目的と役割が明確、顧客接点の最重視、考える(気づく)習慣、率直な話し合い、チャレンジ指向、奨励・褒賞、などを感じている。

 MBWA(マネジメント・バイ・ウオーキング・アラウンド)という言葉がある。「歩き回る(巡回)管理」を意味し、もともと米国のヒューレット・パッカード社の現場重視の考え方で、それが業種の枠を越え広まったものだ。日本でも、外資系ホテルの総支配人の黄金律となっている。

 報告や情報を待つのではなく、現場に出て感じ取り、スタッフの話に耳を傾け、励まし、オープンマインドの企業文化を目指すというものだ。それを見事に体現していた人に、かつて研修で1カ月間過ごしたホテルで出会った。世界的評価の高いオリエンタルバンコック(現マンダリンオリエンタル)で、41年間総支配人を務めた伝説の人、クルト・ワクトバイトル氏である。

 館内を歩くと、営業スペースはもちろんあらゆるバックヤードで、いつも見受けた。氏は、時間と巡回順を代えながら…。

(NPOシニアマイスターネットワーク会員 株式会社ホスピタリティリソーセスジャパン、桐木元司)

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