【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論52】特産野菜の販売を増やす 松浪健四郎

  • 2017年12月5日

 私は植物学者でも農家でもないので、その面の知識は皆無。それでも書きたいのだ。「ナス」が正確なのか「ナスビ」が正式な呼称なのか知らぬが、この「ナス」について書く。

 私の故郷は大阪府泉佐野市、いわゆる泉州地方だ。この地の昔からの農作物は、「ナス」と「玉ネギ」であった。「泉州玉ネギ」の生産高は日本一だったが、淡路島に抜かれ北海道北見市にも抜かれてしまった。東京で暮らす今、玉ネギをスーパーで買うしかないが、泉州人にとっては買うなんて考えもしなかった。好物で健康食品であるがゆえ、毎日玉ネギを食するが高いのにハラが立つ。

 小さい頃から「玉ネギ根性」で頑張れと励まされた。玉ネギは、地に置けば、どこでも根を出し、芽を出す。腐ったなら、鼻をつままねばならない悪臭を発して存在感を示す。私の性格は、いや人生は、玉ネギそのものだったと密かに述懐する。

 さて、泉州の「水ナス」は、あまねく有名で全国的に人気高くなった。浅漬けの珍味は、山形県の庄内野菜である「民田ナス」の辛子漬けにも負けぬくらいだ。全国には、多様な特産ナスがある。30センチもある長ナス、大きな加茂ナス、新潟県の長岡の伝統野菜である巾着ナス、梨ナス、八石ナス等、種類は豊富だが、明確なのは料理の方法ではなく、加工したナスが有名になり販売力を増すということ。

 初夏から初秋まで、毎朝のように母親のヌカに漬けた「浅漬け水ナス」を食べさせられたことを忘れない。ところが、近年、この泉州の「水ナス」は高級品になってしまったのだ。ナスやキュウリは、花をつけただけ実をつける。庭に3本もナスを植えると、毎日、食べねばならぬほど実がなる。「親の小言とナスの花は、千に一つも無駄はない」と教えられたとおり、毎日のナス攻めに苦しむ。

 私たち地元の者は、浅漬けも好むが4、5日漬けた古漬けのすっぱい味も好む。が、他地方の人たちは、浅漬けを好む。2、3日のヌカ漬け、これがうまくて全国的に売れている。まさか、地元の「水ナス」が、こんなに売れるとは想像できなかった。

 山形県鶴岡市の特産である「民田ナス」は、たったの20グラムでピンポン玉よりも小さい。コロコロ転がるほどに丸くて可愛いナス。このナスも1本の苗で200個以上の実をつけるらしい。花をつけただけ実をつけるのは、どのナスも共通しているようだ。

 「水ナス」の特徴は、「ナス紺」の美しさ。包丁を使用せず手で裂いて食べること。包丁を用いると、ナス肉が茶色に変色してしまう。ヌカ漬けのヌカに個々の隠し味あり、秘伝がある。ただ、ヌカに漬けるだけの単純さだ。が、「民田ナス」は、手間をかけている。塩漬けにしたり、酒粕と混ぜて塩抜きをしたり、数々の工程がある。しかも同時に和辛子を栽培せねばならない。和辛子の粉を練って酒粕と砂糖を加えて味つけをする。そして酒粕を落とす。これほどに手間をかける「民田ナス」。

 このことは、特産の野菜というだけでは売れず、加工することが大切だと教えてくれる。いや、生では日もちしないこともある。調理方法よりも加工品をいかに製作するかを考える必要がありそうだ。

 狭い日本でも風土、地質によって農産物が異なる。しかし、珍しいというだけでは売れず、加工品を考えねばならない。これらの研究は、農家にまかせるだけではなく、自治体が開発のために協力すべきだと思う。

 (日体大理事長、松浪健四郎)

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