【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論44】時計がスイスに勝てない理由 松浪健四郎

  • 2017年10月10日

 浅田次郎の現代小説を読んでいると、主人公は「ブランパンに眼を落した」とか「ブレゲの金色のブレスレットが光った」、などと出てくる。読者にとって理解しがたい表現であろう。理解できる読者は、相当な腕時計マニアか、その超高級腕時計の持ち主だ。

 ブランパンとは、スイスを代表する歴史的な腕時計メーカー。凄くシンプルなデザインを特徴とするが高価。ブレゲとは、飛行機を造ったフランス人のブレゲ兄弟の1人がスイスで時計会社を設立したブランド。ブレゲ製の腕時計はフランス海軍が採用したことから有名になり、デザインをあまり変更せず今に伝える高級品。

 日本の時計メーカーは、数社しか存在しないが、スイスには無数のメーカーがある。ほとんど私たちは知らないけれど、小会社から超高級宝飾時計の有名なブランドや他の一流ブランドの会社がひしめく。カメラをはじめ、精密機器で名を馳せる日本といえども、腕時計に関してはスイスに遠く及ばない。車と同様、メカニズムは負けねども、デザインで敗れてしまうのだ。

 だからといって、スイス製は斬新というわけでもない。伝統的な特徴ある気品とデザインを基調とする。一目で、どのブランドであるか判断できるデザインを大切にしている。しかもメーカーのマークのデザインもいい。これも自動車メーカーに通じようか。

 ローレックスやオメガのマークは、あまりにも有名だが、今ではブランド力を低下させていて、大衆時計の部類のトップメーカーらしい。日本ではファンが多いのに、普及しすぎたのかもしれない。価格も手ごろらしい。

 時を刻む正確さにおいては、日本製時計はチャンピオンなのに、ブランド力は下位に沈む。腕時計の価値は、ファッション性に集約され、使用される金属の価値観にもよろうか。

 近年、腕時計のカタログ風の雑誌が多数出版され、若者の間にも時計ブームが見られる。ステータスと憧れの的になっているのだ。高価な品々に興味をもつのは、美意識を高めるうえでもいいことであろう。デザインについて考えるだろうし、ブランド力について学ぶことにもなろう。感性を高めたり養ったりするのにも役立つ。

 時計の輸出国トップはスイス、日本は2位に甘んじる。が、時計部品の輸出の1位は日本で追随を許さない。この現象は、日本らしさを謳っている。しっかり仕事を確実にするけれど、表舞台に立つ器量がない…。

 H・スターンなるブランド時計がある。この会社はブラジルの名だたる宝石会社で、腕時計も売る。欧米では根強い人気があり、かの田中真紀子元外相も身につけられていた。外側は日本製の人工サファイアで、デザインはフランス、製造はスイス、部品も多分日本製と思われる。特徴ある気品を漂わせる高級品で、30年ほど昔、高島屋が単独で販売に熱心だったが手を引いた。あまりにも個性的で成金趣味的なデザインを日本人は受け入れなかったようだ。

 私の主張したいのは、何をするにしても美意識をもたねばならないということ。次にデザインを大切にするということ。

 全国を旅するが、駅を降りてウンザリする。何もかも金太郎飴、特徴も個性もなし。金沢駅は素晴らしかったが…。時計がスイスに勝てない現実を、日本人は学ぶべし。

 (日体大理事長、松浪健四郎)

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