【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論41】古い民家の保存活用を 松浪健四郎

  • 2017年9月14日

 いよいよホテルや旅館が足りなくて、民泊が常態化する。若い頃、外国ではユースホステルなど、安い宿泊所を探した思い出がある。外国人旅行者が増加するにつれ、宿泊施設不足はつきまとう。「ベッド・アンド・ブレックファースト」(朝食つき宿泊所)は、英国の民宿、大英博物館で研究していたおり、私たちの定宿だった。

 近年、どの自治体も旧庄屋や旧寄り合い所の古い民家風の建物を買い上げ、いろんな工夫をしながら活用している。外観は昔のままであるとか、立派さが抜群であるとか、保存価値の高い建造物は重要文化財に指定される。が、それほどでなくとも遺(のこ)すことは大切だ。

 安芸の宮島や柳井市などは民芸館風に活用していて、訪問客にロマンを提供してくれた。古い道具や家具、日用品等は、当時は珍しくもなく安価だった。今となっては貴重な資料である。私たちは古い物を捨てる習性をもつ。そもそも保存すべくスペースをもたない。

 明治のはじめ、維新政府は欧米から「お雇い教師」を多数招聘(しょうへい)した。大森貝塚を発見したエドワード・モース博士は、考古学者ではなく、魚介類の研究者であった。モースは、滞在中、民具を収集して帰国時に米国へ持ち帰った。農具をはじめ女性の化粧道具、力士の道具等、多様性にとむコレクション。高価で貴重な品々ではなく、ありふれた物ばかり。

 シカゴのモース記念館で展示されているが、現在では異彩を放つ収集品だ。これらは日本にはなく、研究者はシカゴへ飛ぶしかない。私たちには、100年先を読む能力なんてなく、スペース第一主義にとどまる悲しさしかない。

 滋賀県守山市では、旧酒蔵とその住居を買収し、上手に改造していた。驚いたのは料理屋、集会所、みやげ物店として活用されていたこと。市民や観光客の憩いの場となり、守山の歴史を識(し)る資料館ともなっていた。建物は威風を漂わせ、江戸時代の文化、近江文化の雰囲気を実感することができる。宮本和宏守山市長に近江牛のスキヤキをご馳走になりながら、この建物の貴重さを講義していただいた。

 もし、この建物が民間業者の手にわたっていたなら、マンションに転じていたに違いない。守山市が買い上げ、公民館、土地の料理を提供する料理屋を経営。「何もかも順調です」と宮本市長が胸を張る。

 ビックリしたのは、この旧酒蔵と住居は、元内閣総理大臣だった故宇野宗佑氏の実家だったということ。宇野総理は文化人としても知られ、書家なみの腕前だった。私も色紙をいただいたが立派な字に圧倒される。氏のコレクションも館内に寄贈されていた。

 民家を解体し、それを利用しての住宅建築も流行しているにつけ、大型の民家は工夫を凝らして遺すべきである。

 私は、民泊施設に改良するのがいいと考える。外国人旅行者からすれば、日本文化に触れることから喜ばれると思うのだ。日本建築の技術は文化であり、日本の宝である。重要文化財に指定されなくとも、登録文化財でもいい。私たちには、後世に文化を伝える使命がある。

 全国に古い立派な家屋、民家がある。その利用は民泊施設か自治体のゲストハウスに転用し、活用すべきである。自治体が音頭をとって今日風の保存活用を考えてほしい。

 (日体大理事長、松浪健四郎)

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