【ちょん髷理事長モノ申す 地方再生・創生論25】外国人の積極的な受け入れを 松浪健四郎

  • 2017年5月17日

 半世紀前にさかのぼる。日体大を休学して米国・デトロイトから北上して60マイル、エピシランティ市に2年近く暮らした。州立東ミシガン大留学のためである。当時、1ドル360円、教師の初任給は2万5千円だった。国外へ持ち出せるのは500ドルぽっきり。

 留学費用は、学費・寮費で年間150万円が必要。裕福な家庭の子弟でなければ、米国留学は高嶺の花。それでも留学できたのは全額奨学金を大学から受けたからだ。レスリングの特技による競技者特待生である。

 丸っきり英語のできない私を、旧師範学校として伝統のある大学が文句なしに受け入れてくれたのである。この国は、万能を平等に評価し、一芸を重視する。メキシコ5輪の候補選手で、全日本学生チャンピオン、全日本2位という戦績もつ私に留学機会を与えてくれたのである。夢を見ているほどにうれしかった。

 エピシランティ市は人口10万の小さな町。初めてやってきた「ジャップ」(日本人野郎)で、珍しい存在。敗戦国で敵国だった日本人の地位は低く、差別を受ける空気が充満する時代だった。トヨタのコロナが輸出された頃だが、日本車を見ることはなかった。

 小さく地元の新聞に私の紹介記事が載ると、あちこちの小学校から声がかかる。何も教えることができないので、下手な英語で折り紙を教えた。新聞を切って教材にすれば、信じられぬほど喜ばれた記憶が脳裏に宿る。

 私の国際交流体験のプロローグといってよい。米国人は、異文化に興味があり、それを取り込もうとする積極的な姿勢が見られた。米国とはいえ、地方の小さな町の人々は、異文化に飢えている印象を持ち、留学生の活用に熱心なのには閉口するほどであった。

 やはり移民の国、多様性を認め自分たちの持たないモノを探しているかに映った。が、半世紀後に登場したトランプ大統領の演説は、孤立主義に走ろうとする、かつての米国を否定するかの内容。寛容さを忘れた大統領、私の米国像が崩れつつあるのが悲しい。

 ロータリークラブやライオンズクラブは、留学生を招いたり、送り込んだりして、交流を行事化させている。けっこうなプログラムであろう。だが、その留学生を上手に生かしているのかどうか疑問である。語学でもいい、民族舞踊でもいい、互いの文化を交換することを忘れてならない。その体験は親日家を作るばかりか、国際化に役立つ。

 さて、自治体の仕事は細分化され、専門的な知識や技術が求められる時代に突入した。けれども、平等、民主的という美名のもと、職員採用は一元的である。米国の大学の器量からすれば、普通の人材しか役所が認めないという図になる。万能の人間なんて存在するとは思えない。一芸を評価して職員を採用する自治体の出現を望みたい。

 そして、自治体が留学生のための奨学金制度を設けるべきだ。国際化の第一歩は、子どもたちの中に異文化もつ外国人を入れることから始めるべし。

 グローバル化する社会に自治体が率先して取り組まなければ、江戸幕府の鎖国政策と同じではないか。維新政府は、外国からお雇い教師を多数招聘したことを忘れてはならない。

(日体大理事長、松浪健四郎)

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